<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<rdf:RDF
 xmlns:rdf="http://www.w3.org/1999/02/22-rdf-syntax-ns#"
 xmlns="http://purl.org/rss/1.0/"
 xmlns:content="http://purl.org/rss/1.0/modules/content/"
 xmlns:taxo="http://purl.org/rss/1.0/modules/taxonomy/"
 xmlns:dc="http://purl.org/dc/elements/1.1/"
 xmlns:syn="http://purl.org/rss/1.0/modules/syndication/"
 xmlns:admin="http://webns.net/mvcb/"
>
<channel rdf:about="http://bisista.blogto.jp/">
<title>ビジスタニュース - 山形浩生</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/</link>
<description>
</description>
<dc:language>ja</dc:language>
<admin:generatorAgent rdf:resource="http://blog.livedoor.com/?v=2.0" />
<items>
 <rdf:Seq>
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1340175.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1327630.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1314690.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1305556.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1272383.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1249697.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1239773.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1220685.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1213429.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1207360.html" />
  <rdf:li rdf:resource="http://bisista.blogto.jp/archives/1199438.html" />
 </rdf:Seq>
</items>
</channel>

<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1340175.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1340175.html</link>
<description>担当者より：2010年５月に配信された、メルマガ「週刊ビジスタニュース」での山形浩生さんによる書評連載の最終回です。山形さんと守岡桜さんの訳によるフィリップ・ショート『毛沢東　ある人生』（白水社、上下）もよろしくどうぞ。

配信日：2010/05/26


ベトナムから戻っ...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-09-02T15:00:19+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>2010年５月に配信された、メルマガ「週刊ビジスタニュース」での山形浩生さんによる書評連載の最終回です。山形さんと守岡桜さんの訳によるフィリップ・ショート<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/456008081X/">『毛沢東　ある人生』</a>（白水社、上下）もよろしくどうぞ。<br>
<br>
<u>配信日：2010/05/26</u><br>
<br>
<br>
ベトナムから戻ってきて、前回予想だけで書いたものをざあざあと読み流しているけれど、ほぼ予想した通り。したがってそれぞれを細かく解説したりはしないけれど、田中秀臣<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4023308137/">『デフレ不況』</a>（朝日新聞出版）は、日銀の陰湿ないじめの例があれこれ出ていて、エグい内部のいじめ体質が浮き彫りになっているのは予想しなかったところ。そういうゴシップ的にも大変おもしろいので、是非一読を。<br>
<br>
さて、なんだか多くの人が伊藤計劃評を期待しているそうで、優先度をあげて読み終えましたよ、<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4150309841/">『虐殺器官』</a>（ハヤカワ文庫JA）。大変に楽しめた――ヨハネ・パウロの動機づけと主人公の最後の行動以外は。そこで急に話がしりすぼみになるのが残念。そういうオチにしたいなら、前半で先進国のテロの話をもっと書き込まないと。あるいは主人公が出張先で、昔はアメリカでテロしていたやつに出くわして、「いまはそれどころじゃないんだ」と言わせるような話をいくつか伏線で張っておくとか。<br>
<br>
ついでに、虐殺器官が多少のプロパガンダで止まらなくなり、身内の殺しあいになってしまうなら、進化的にはあまりに不利でしょう。そのままでは説得力を欠く。いま書くなら主人公がヨハネ・パウロの使徒となってしばらく行動しつつ、不穏な三角関係を保つような展開にして、あそこはこう書き直してみよう、それと虐殺器官自体があまり前面に出てこないので不満だな、発動をもっと歴史的に描いて（冒頭のエピソードは大躍進時代の中国かなんかにするとか）、進化的な必然性に厚みを加えたうえで、主人公の目の前でそれが突然発動する場面かなんかを出して、ついでにその器官の停止条件を導入するといいな、すると主人公とママのうっとうしい思い出話もやめて、語り手はかつてどこかの大虐殺の生き残りにして、そのうえであれやこれや加筆すると、おおこれはなかなか……と考え出したところではっと気がついたんだが、そういえばこれってぼくが書いた小説じゃないんだよね。<br>
<br>
でも、小説の盛り上げ方もディテールの構築も、なんだか……すごく既視感があるのだ。ヨハネ・パウロのオープンソース資料の分析、CIAが現地語も読めないエージェントを派遣するというグチ。戦争のコスト高騰からくる採算性のなさ、そして何より、本書のテーマになる、言語が身体器官だというチョムスキー説の解説も。<br>
<br>
なんだかぼくのウェブサイトを切り貼りすると、この小説の元型ができちゃいそう。むろん、著者がぼくのウェブなどを読んでいたという証拠はないし、ぼくが考える程度のことは頭がいいやつなら思いつけることではある。それに英語のことわざに、「Great minds think alike」というのがある。かれも似たような関心を持って、似たようなネタを漁っていたんだろう。<br>
<br>
でも「こういうネタならあの話……」と思っているとそれがすかさず出てくるのを何度か読みながら体験し、なんだかこそばゆいような。それだけにこの最後は「オレならこのラストにするまでにもう一回ひねる！」という気がして、たいへんスプランジな感じ。でも、ぼくもどきの小説だけあって、その知見も世界観も、そこらのくだらん平和ボケした日本の小説よりはるかに上だ。ぼくのこんなコラムをずっと読んできたあなた、是非お読みあれ。楽しめることうけあい。<br>
<br>
ちなみに巻末の解説で、解説者は伊藤が本書のために「集めた資料もおそらく膨大なものだろう」と述べるんだけれど、その例として挙がるのは、ピンカーにデネット、ガザニガなどの通俗書。ほとんどこの欄で紹介したような本ばかりで、これのどこが膨大なの、と鼻白む思いをするのだけれど、一方ではこの欄で紹介した本が、世間的にはかなり高度なものだということを示しているものでもある。<br>
<br>
だからぼくの言うことを信じて、ちゃんと紹介したものを読んで活用すれば、あなたも今頃は伊藤計劃になれていたかもしれないのに。そうなれなかったのは、別にあなたに才能がないからではなく、ひたすらあなたの努力が足りなかったからなのよ、というのがぼくの最新訳書、マシュー・サイド<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4760138382/">『非才！』</a>（柏書房）のテーマなので、興味ある方はご一読あれ。<br>
<br>
出版事情についてのグチはあちこちで聞かれるけれど、よい本はたくさん出ているし、この欄が始まってからも、<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4150309841/">『虐殺器官』</a>などで参照されている行動経済学や脳科学や、その他多くの分野の書籍は以前とは比べものにならないくらい充実してきているのだ。<br>
<br>
ベストセラーのリストだけ見ていると、あるいは流行ばかり見ていると、腐ったタレント本やら扇情本、柳の下のドジョウ狙いの追随本、返品増加に倒産騒ぎ、そしてこんな有益なメルマガさえなくなる劣悪な財務状況、さらにはiPadだのなんだのと、本を取り巻く環境は悪化しているように見えるし、出版界のレベルは落ちているようにも見えるし、そしてその通りだという部分も多い。<br>
<br>
でも一方で、読める本のストックとして見ると、実は状況はそんなに悪くないのかも、とぼくは思っている。そしてちょっとそのためのガイドがあれば、みんなずっと有効にそうした本やら情報やらを使えるのに、とも思う。こんなコラムが、少しでもその役にたてたことを祈りたいけれど、どうだろうね。ではまたどこかで。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1327630.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1327630.html</link>
<description>担当者より：2010年４月の山形浩生さんの書評連載です。また、山形さんと守岡桜さんの訳でフィリップ・ショート『毛沢東　ある人生』（白水社、上下）が刊行されました。山形さんは同じ著者の『ポル・ポト　ある悪夢の歴史』も訳されています、併せてどうぞ。

配信日：2010/...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-07-23T12:30:00+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>2010年４月の山形浩生さんの書評連載です。また、山形さんと守岡桜さんの訳でフィリップ・ショート<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/456008081X/">『毛沢東　ある人生』</a>（白水社、上下）が刊行されました。山形さんは同じ著者の<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4560026270/">『ポル・ポト　ある悪夢の歴史』</a>も訳されています、併せてどうぞ。<br>
<br>
<u>配信日：2010/04/28</u><br>
<br>
<br>
日本はずいぶん寒いそうですが、お元気でしょうか。こちらベトナムのカントーは、いつもながら大変お暑うございます。実は今回のベトナム出張は、ぼくがチームリーダーというやっかいな役回りで、いつものように気楽にさぼれないので、あまり読む本も持ってこられませんでしたよ。<br>
<br>
そのため、今回のはほぼすべて見込み。戻ったらこんな本を読みますというご報告。ちゃんとした書評にならないのはお許しあれ。<br>
<br>
出張以外にも、いくつかまとめて訳書を仕上げなくてはならずバタバタしていたのも本が読めなかった一因。少々自己宣伝になるけれど、ちょっと苦労したジェイン・ジェイコブズ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4306072746/">『アメリカ大都市の死と生』</a>（鹿島出版会）が出て、もともと都市問題については必読の名著のほまれ高い本であると同時に、原著刊行から半世紀たった位置づけの見直しを行っている点で、ぼくとしてはちょっと自信作。<br>
<br>
それと同時に鹿島出版会から、ケヴィン・リンチ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4306052540/">『時間の中の都市』</a>が復刊。これは都市というものにおける時間的な価値についてきちんと考え、古い建物の保存の意義についてまじめに考えたよい本なので、そういう話に関心ある人は、ジェイコブズと併せてお読みくださいな。結論ありきの独善的な話に終わらないのが、ケヴィン・リンチのよいところです。<br>
<br>
そうした古い建物とは真逆の、現代にしかあり得ないまったく新しい産業・科学的な構造物ばかりを写真におさめた西澤丞<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4778312120/">『Build the Future』</a>（太田出版）はすばらしい写真集。これはもう、見て！　としかいえないすごい迫力。気に入った人は、この人の他の作品集も是非どうぞ。<br>
<br>
こうした建物も含む空間的な話としてはコリン・エラード<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4152091266/">『イマココ』</a>（早川書房）がおもしろそう。動物レベルから空間認知をとらえてあれこれ論じた話のようで、アングル次第ではおもしろそう。先のケヴィン・リンチも、都市の居心地のよさを空間認知の容易さと結びつけていて、たぶん関係してくるはず。<br>
<br>
経済分野としては、田中秀臣<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4023308137/">『デフレ不況』</a>（朝日新聞出版）が戻ったら出ているはず。だんだん（やっと！）責任追及がゆるゆるとではあるものの始まりつつある日銀のこれまでの政策（またはその不在）について歴史的にフォローした勉強になる一冊のはず。いまの日本の経済状況や、各種政権の経済政策について俯瞰的な視点が欲しい人は、読んでおくとたいへんに勉強になるはず。ぼくも勉強します。経済の勉強といえば、ローマーマクロとか斉藤誠マクロとか、えらい教科書が出てるので、それを読みましょうといいたいところだが、ぼくでもこの水準までは勉強していない。こちらは一般の方には不要でしょう。<br>
<br>
小説では、伊藤計劃<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4150309841/">『虐殺器官』</a>（ハヤカワ文庫）を読みたかったんだが、出張にはなるべく読み終えたら捨てられる本を持ってくることにしているので（そうでないと帰りの荷物が重くなるのですもの）、読み終えてません。<br>
<br>
ちなみに持ってきたのはトム・ロブ・スミス<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4102169318/">『チャイルド44』</a>（新潮文庫、上下）。スターリン時代のソ連の状況を背景に起きる連続殺人事件、そしてそれを延命させた「社会主義に犯罪はない」という変なイデオロギーの作用など、非常にうまく構築されていて、三回くらいは再読に耐えるとてもよいサスペンス小説。ハイフォンの某所に寄贈してきました。同じ著者の<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4102169334/">『グラーグ57』</a>は次回出張で読むと思う。<br>
<br>
でもそれよりも、これまた帰ったら読まなくてはいけないのがナボコフ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4309709621/">『賜物』</a>（河出書房新社）。これは例の池澤夏樹による世界文学全集の最新刊だけれど、この全集の目玉の一つでしょう。旧訳はイマイチの声が高く、原著の繊細さをかなりダメにしていたので、沼野充義の新訳はとても楽しみ。ナボコフらしい、くどい小説で何が起こるわけではないけれど、しつこい感じの文が好きな人にはおすすめ。<br>
<br>
逆にキビキビ話が展開しないと気がすまない人は、うーん、たぶんナボコフは向いていないので、この一冊もおすすめはしない。おそらくこの次あたりに出るギュンター・グラス<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4309709648/">『ブリキの太鼓』</a>はもっと万人にお勧めできる名作。グラスもナチスだったことがバレて味噌をつけたし、特に近作ではその小説の古くささ――それも特に考えているわけではなく、鈍感なだけの古くささ――がうんざりさせられるんだけれど、この『ブリキの太鼓』は掛け値なしの傑作。小説が面倒な人は、映画で観てもあまり価値は落ちないと思う。人によってはウナギが食えなくなるけれど。<br>
<br>
ではまた。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1314690.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1314690.html</link>
<description>担当者より：山形浩生さんの書評連載で、2010年３月に配信した分です。また、山形さんが訳されたジャック・ケルアックとウィリアム・バロウズの『そしてカバたちはタンクで茹で死に』（河出書房新社）が発売されています。ご関心のある方はぜひ。

配信日：2010/03/24


こん...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-06-22T16:50:23+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>山形浩生さんの書評連載で、2010年３月に配信した分です。また、山形さんが訳されたジャック・ケルアックとウィリアム・バロウズの<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4309205399/">『そしてカバたちはタンクで茹で死に』</a>（河出書房新社）が発売されています。ご関心のある方はぜひ。<br>
<br>
<u>配信日：2010/03/24</u><br>
<br>
<br>
こんにちは。<a href="http://bisista.blogto.jp/archives/1305556.html">前回</a>述べたスターリン伝を読むのは先送りにいたしました。とてもじゃないが読み切れないし、このぼくですら予備知識があまりに足りない。でも途中まで読んでいたら、他の本があまり読めなかった。なので今回は少なめです。<br>
<br>
前回の原稿を書いた頃からどういうわけか知らないけれど、最近の地球温暖化の性急な防止策議論に疑問を呈する本がまとめて出ている。クライメートゲートが徐々に盛り上がってきて、好機だと見たのかな（なんてそんなお手軽な本はないけれど）。<br>
<br>
１冊はスベンマルク＆コールダー<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4769912137">『“不機嫌”な太陽』</a>（恒星社厚生閣）。これはちょっと変わった本で、そもそも地球温暖化は二酸化炭素より大きな原因があるんじゃないか、という本。これはぼくの訳したロンボルグの本でも少し触れられている説。実はいまの温暖化予測に使われている気候モデルは、雲をあんまりうまくモデル化できていない。空中に水蒸気があるだけでは雲ができない。なにか核を形成するきっかけがいるんだけれど、それがよくわからないので、モデルにできないのだ。でも、雲があると日光も遮られるし、温暖化の予測も結構ちがってくる。<br>
<br>
著者たちは、雲は宇宙線によってできる、という説を唱えている。そしてこれ自体は、特に変な説ではない。素粒子を見るのに使う霧箱というのはまさに、その原理で成立している。ただそれが地球規模でどこまで言えるのか？　本書は、科学者・スベンマルクと、科学ジャーナリストのコールダーが組んでその仕組みを追っていった、とてもおもしろい１冊。ちょっと専門的になるけれど、目を通しておいて損はない。かれらの言う通り、これが二酸化炭素の影響を上回るほどのものなのか、あるいは二酸化炭素もそれなりに効いているのかはわからないけれど、これがまったく影響しないというのは考えにくいし、温暖化への影響はさておき、雲の形成が宇宙の活動とつながっているという、宇宙気候学という変わった分野について知ることができるのはなかなか面白い。スベンマルクはこの説を唱えたために学界で冷遇されてしまってかわいそう。おもしろい先駆的な分野だから、普通に研究させてあげてほしいなあ。<br>
<br>
二番目は、ちょっと意外な選手。ヴァーツラフ・クラウス<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4822247988/">『「環境主義」は本当に正しいか？』</a>（日経BP社）だ。現職のチェコ大統領が、いまのあまりに性急な地球温暖化防止策議論に疑問を呈し、環境がイデオロギー化して、環境とさえ言えばどんないい加減な議論でもまかり通る状況（かれの言う「環境主義」）に危惧を述べている本。各種の「環境主義」的な議論や、京都議定書や先日のコペンハーゲンで取りざたされた各種の対策などについて、経済学的にきちんとした反論を提示している。温暖化への性急な対策を訴えるゴアの議論や、その尻馬に乗ったスターン報告への詳細な疑問と批判は、実にまっとう。またその内容について、若田部昌澄がこれまたとてもきちんとした解説を加えていて、逆の意味で屋上屋を架すような、やりすぎなほどの親切さ。そして最後に、いったい政治家としては何を重視しなくてはならないか、どういう世界を目指したいかを実にはっきり述べる。変な環境主義のために自由を犠牲にしてはいけない。きちんとした検証と事実に基づいた政策を進めねばならない。それが実に簡潔かつ明瞭に述べられている。どっかの国の「友愛」とかいうお題目とは大違い。<br>
<br>
そもそもぼくは、チェコの現職大統領がここまでのものを書けるというのに驚愕した。今の日本政府のトップは、首相も経済関連閣僚も、経済学のイロハも知らないとおぼしきド素人の烏合の衆。割引率って何、とかリスクって何、GDPって何、といった基本すらわかっていないことが、国会答弁その他で次々にあらわになっている。無知なもんだから空気に流されるのをよしとして、温暖化もなんだかよくわからないままに、勝手なことを口走っている。それに比べてこの本の立派さ。少なくとも、何が問題になっているのか、どこらへんにつつきどころがあるのか、科学的な内容に加えて、さすが経済学博士だけあって、細かい割引率の考え方にまでふみこんで詳細に議論している。そして疑問だと思えば空気に流されずに言うことを言える――すばらしい。知識も知見も勇気もある、こんな政治家が日本にもほしいなあ。とはいえ、だからといってチェコが経済的によい状態かといえばそんなことはないのがむずかしいところ。<br>
<br>
さて、経済の話といえばうっかり見落としていたけれど、スティグリッツ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4198629137/">『フリーフォール』</a>（徳間書店）が出ていた。正直いって最近のスティグリッツは、通俗本を出しすぎだとは思うけれど、でもこれは今回のサブプライム＆リーマン危機のまとめとして非常によいし、そこから経済学批判につなげるというありきたりな構成とはいえ、天下のスティグリッツがやっていると迫力がなかなか。住宅ローンの問題や各種の金融機関規制の問題については、ある程度類書でも指摘されているような話が多い。そこからの経済学批判は、やはり過度の合理性批判と、そして経済学の中でもインフレの危険性を過度に言いつのる連中への罵倒批判！　インフレなんか怖くないし、デフレのほうが怖いから、インフレを恐れずにガンガン政策を売っていかんかい！　というのをはっきりと言明している。ホント、日本にはクルーグマンがインフレ目標捨てたとか、スティグリッツがインフレ目標捨てたとか、嘘八百を並べる人がたくさんいるので、ちゃんと読んで確認しといてね。あと、グローバルな経済についても、中国はよくやっているのできちんと評価しろ、世界的な基金がいるんじゃないの、等々。アメリカのシステムについても今後の対応についても、立場をわきまえない（いい意味で）果敢なアイデアがいっぱいで、非常におもしろい。<br>
<br>
さて、小説では、山尾悠子<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/433605021X/">『歪み真珠』</a>（国書刊行会）なんかよいのでは。山尾悠子は……山尾悠子です、という以外に形容できない、不思議な世界の持ち主。幻想小説が好きな人なら是非に、というところだが、幻想小説が好きな人で山尾悠子を知らない人はいないので、ここに書くまでもないか。でも知らない人は、これは短編集だし、とっつきやすいんじゃないかない。<br>
<br>
あと、不勉強でこれまで知らなかったが、伊藤計劃<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4150309841/">『虐殺器官』</a>（ハヤカワ文庫）、柳下毅一郎が薦めていたので読み始めたが、ちょっとすごい。まだ読み終えていないんだけれど、いつの間にかこんな作家がいたのか！　しかもいつの間にか消えていたという……驚きです。読み終わったら何か書くかも知れないが、とりあえずご報告まで。<br>
<br>
それにしても先週、たまっていた訳書を３冊続けて完了。われながら大したもんだ。来週はさらに２冊挙げる予定。おれってよく働くなあ。では、皆様また来月、無事年度末を乗り切ってくださいな。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1305556.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1305556.html</link>
<description>担当者より：山形浩生さんによる書評連載の2010年２月分です。ご一読ください。

配信日：2010/02/24


ラオスから帰ってきたら、日本は寒うございますねえ。さて今回は、なんだか全般に科学っぽいセレクション。

まず科学ライターとしては、いまや世界有数のサイモン・シン...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-06-02T11:52:43+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>山形浩生さんによる書評連載の2010年２月分です。ご一読ください。<br>
<br>
<u>配信日：2010/02/24</u><br>
<br>
<br>
ラオスから帰ってきたら、日本は寒うございますねえ。さて今回は、なんだか全般に科学っぽいセレクション。<br>
<br>
まず科学ライターとしては、いまや世界有数のサイモン・シン＆エツァート・エルンスト<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4105393057/">『代替医療のトリック』</a>（新潮社）。ホメオパシーとか水の伝言とか、カイロプラクティックとかヒーリングとか、針灸とか、自然分娩とか。基本は、すべてインチキ。まともな代物は一つもない。みんなプラシーボ効果かそれ以下の代物。でもこういう本って、本当に読んで理解すべきあわれなビリーバーたちは、そもそも手に取らないんだよね。境界線上で迷っている人はどうぞ。<br>
<br>
そしてすでにこの手の代物なんかまったく信じていない人は、ほとんどお笑いと思って読みましょう。ガチガチの科学論者が、何かをきっかけにコロリとダマされることもあるし、オレオレ詐欺と同じく、自分だけはだまされないと思っている人がいちばん危ないので、たまには自分の知識を確認するもの重要。それに、ここまでありとあらゆるものがなで切りにされると爽快というか……。ちなみに、共著者のエルンストの経歴がなかなかおもしろい。向こう側の世界を一応知っているという……。<br>
<br>
で、次はフランク・ウィルチェック<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4152090979/">『物質のすべては光』</a>（早川書房）。簡単そうに書かれていて、む、む、むずい。いや、物には何で重さがあるのか、といううような話を展開していて、ふんふんと読んでいるうちに、一体何の話が展開されているのかわけがわからなくなるという代物。でも、科学者が自分のやっていることについて、わかっていることもわかっていないこともごちゃまぜに出してくる様子は、楽しげで読んでいて気分のいい本。しかし現代物理学はここまでくると、「もうそんなこと考える必要があるんですかぁ？」という域に達していて、そろそろ予算打ち切ってもいいかなという感じもする。<br>
<br>
さてもう少し予算もつけたいし、読んでいてわかる代物が、基本的な生物学。最近久しく手に取っていなかったブルーバックス。デイヴィッド・ダヴァほか<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4062576724/">『アメリカ版 大学生物学の教科書　第１巻 細胞生物学』</a>（講談社ブルーバックス）は、あの分厚く重いLIFE（という生物学の教科書）のいくつかの章を訳出しようというありがたい試みの皮切り。この最初の巻は、細胞のすべて。<br>
<br>
細胞というとこれまた分厚く重い教科書の『細胞の分子生物学』があるけれど、あそこまで手を出す気のない素人なら十分すぎる内容がつめこまれているし、書き方が常にはっきりした目的意識を持っているので、読んでいてだれない。流石に最後のほうにきて細胞内のエネルギー反応の話とかになると、ちょっとしんどそうだけれど。ちなみにこれがMITの一般教養で使われている教科書だとしきりに書かれているけど、さしものMITの連中も、こんな本全部やるわけじゃありませんので、興味が失せたらそこでやめればよろしい。このあと遺伝と分子生物学も出るとのことなので、みなさん買い支えましょう。<br>
<br>
さて息抜きという感じで、与那原恵<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4480426833/">『美麗島まで』</a>（ちくま文庫）。沖縄出身の著者の母親の死から始まり、そこから少しずつ先祖の来歴をたどるうちに、話は沖縄と台湾を行き交い、そこに日本やアメリカが徐々にからんでくる。家族史と政治史とが、著者自身の探求の旅そのものと入り混じり展開される、ゆっくりとした不思議なノンフィクションだ。<br>
<br>
歴史に翻弄される沖縄と台湾の歴史の中で、人々もまた翻弄されつつ、でも一方ではごくごく当たり前の生活を送り、幸せだったり幸せでなかったりする暮らしを紡ぎ続ける。実はちょうど昨日、もはや存在自体が歴史そのものになり、ほとんど人間ではなくなってしまったある独裁者のすさまじい伝記を訳し終わったところなんだ。そういう殺し合いと権謀術策にまみれた大文字の伝記とか歴史とかを離れた、歴史の成り行きを甘んじて受け入れるしかない人々の姿を通してあらわれてくる時の経過が描かれていて、本当にいい本です。<br>
<br>
……と書いているところへ届いたのが、サイモン・セバーグ・モンテフィオーリ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4560080453/">『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち』</a>（上下巻）および<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4560080526/">『スターリン 青春と革命の時代』</a>（いずれも白水社）。えーと、ぼくもこんな分厚い本を三冊も半日で読めるわけじゃないが、これがすさまじい代物なのはほぼ約束ずみ。まさに<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4480426833/">『美麗島まで』</a>とは正反対の本で、スターリンをめぐるクレムリンのぐちゃぐちゃの権謀術策にまみれた、大文字の歴史に常軌を逸した人々の胸が悪くなるような活動をまぶした代物のはず。<br>
<br>
ぼくが訳したばかりの伝記にもこの人はさんざん登場して事態をひっかきまわしている。うーん、読まざるを得ないが、スターリンの他の伝記って読んでないからなあ。方向性としてはスターリンを単に怪物としてとらえるのではなくもう少し人間っぽく描こうとする試みらしいんだけど、あれだけのことをした人物がいまさら、愛妻家だったとかいう程度の話で人間になれるものか、まずはお手並み拝見。<br>
<br>
でも、次回までには読み終わらないと思う。そうでないと次回この欄は空欄になるぞ。というわけで、次回どうなりますやらお楽しみに。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1272383.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1272383.html</link>
<description>担当者より：年始一発目の山形浩生さんの書評連載です。小説から歴史ものまで幅広く紹介されております。

配信日：2010/01/28


年が明けましたねえ、遅ればせながら。わたしはラオスの片田舎でこれを書いておりますですよ。みなさん、前回紹介した『ルワンダ中央銀行総裁日...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-03-25T14:45:21+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>年始一発目の山形浩生さんの書評連載です。小説から歴史ものまで幅広く紹介されております。<br>
<br>
<u>配信日：2010/01/28</u><br>
<br>
<br>
年が明けましたねえ、遅ればせながら。わたしはラオスの片田舎でこれを書いておりますですよ。みなさん、前回紹介した<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4121902904/">『ルワンダ中央銀行総裁日記』</a>はお読みいただけまして？<br>
<br>
さて、新年もいろいろおもしろい本が出はっておりますよ……と書いてみたんだけど、よく考えるとそんなにないな。まずは何をおいてもコーマック・マッカーシー<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4152090936/">『ブラッド・メリディアン』</a>（早川書房）。もう最近、コーマック・マッカーシーさえあれば小説は他にいらないと思うくらい。<br>
<br>
かれの小説は、設定とかあらすじとか書いてもほとんど意味がない代物で、食べ物を粗末にしてはいけませんとか、２ちゃんねらーどものすがりたがるちんけな教科書道徳をはるかに超越した、残虐で非道な悪に不思議な気高さがあり、人間のつまらない行動の中に、「思い」なんていう卑しい代物を超えた存在があることを感じさせるものばかり。なんだか、傑作しか書けない人というのがいることを思い知らされる。『国境の町』も近々復刊予定。<br>
<br>
経済方面は、ポール・コリアー<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4822247872/">『民主主義がアフリカ経済を殺す』</a>（日経BP社)。先進国は、アフリカやカンボジアにでかけて爆弾落としても選挙やらせて、いやあ民主主義が実現しました、すばらしい、民主主義こそ経済発展の基盤です、という。でも実は貧乏な国では、民主主義はむしろ紛争を増し、国の発展を遅らせてしまうことが統計的に示されている。だから先進国は、独裁でもなんでもいいからまず経済発展させて、それが実現してから民主主義しろと圧力かけるべきだ、というわけ。<br>
<br>
実はこれ、実際に途上国で活動する人々はみんな知ってることで、たとえばロバート・ヤング・ペルトン<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4062690608/">『世界の危険・紛争地帯体験ガイド』</a>（講談社）には「独裁国が民主主義になったら、とにかくその国を逃げ出せ、ものすごい殺しあいが始まる可能性が甚大だから」とはっきり書かれている。ちなみに、この本についてぼくが書いた書評は<a href="http://cruel.org/cut/cut199704.html">こちら</a>。<br>
<br>
こういうと、じゃあ独裁者とその人権弾圧を見過ごせというのか、といきりたつ人がいるが、それに対して著者は「その通り！」と答える。理想をふりかざすばかりが能じゃない、二枚舌とダブルスタンダードも大人の処世術よ。そしてまた、途上国の独裁者だってバカじゃないので、選挙くらい買収虐殺票のすりかえ強制移住等々、あの手この手で結果くらいいくらでも操作するし、それがなおさら状況を悪化させる。下手に選挙させないほうがいいかもよ、というわけ。イラクだって、フセインを温存したほうが国が安定して発展しただろうし、多少豊かになったら国民も「王様にあんまり好き勝手されても困る」と言いやすくなって、民主主義も導入しやすかっただろう。<br>
<br>
でも、少しはなんとかしたら？　あんまし独裁者に好き放題されるのもしゃくじゃない？　それに対して著者が提案する方式というのは、こういうものだ。独裁者は先進国に「きちんとガバナンスします」と叩頭して約束する。そして、その約束を独裁者が守っていたら、独裁政権に対してクーデターが起きたときにも軍事介入して守ってあげると先進国も約束する、というもの。<br>
<br>
いやー、それはどうよっつー気はしなくもない。「きみはろくでもない独裁者だが大人しくしてればクーデターが起きたときに守ってあげるからね」というのは、いいのかよ。でも、他にもよい提案（やるなら一貫性を持った対応しろとか、不安や同情でぶれた対応するなとか）はたくさん載っている。みんなが触れたくない問題に正面から取り組んだえらい一冊なので、途上国問題に関心ある人はどうぞ。いまのハイチ再建にもたぶん係わってくる問題だと思うよ。<br>
<br>
あと、中西準子<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4535585741/">『食のリスク学』</a>（日本評論社）は是非お読みあれ。そう、タイトル通りの本。いまなお続く、ヒステリックな狂牛病問題と、全頭検査がどうしたとかいう無意味な話のあほさ加減、中国製ぎょうざ問題、まったく意味がないどころかかえって有害な有機食品だのをめぐる変な信仰。それをリスク学の権威ともいうべき中西準子が次々に切って捨てる……わけではなく、ちゃんと評価して、どこまでが意味のある話なのかをていねいに教えてくれる、とてもよい本。<br>
<br>
中西準子のすばらしいところは、常にフェアなこと。彼女は、トリハロメタンの問題やダイオキシン問題や合成洗剤問題で、最初は「進歩的」な市民活動家にかつがれることが多い。でも、状況はやがてかわるし、政府だって企業だってちゃんと対応してくる。すると彼女は、「事態は改善されたからもう騒ぐべきではない」ときっぱり言える人だ。そうすると、市民活動家たちは手の平をかえしたように彼女を糾弾しはじめる。後半のインタビューではそうした各種のエピソードも満載。食の安全に関する本当の考え方を学ぶとともに、それを取り巻く政府、研究者、市民活動家、企業、マスコミなどの動きについてもいろいろ考えさせられる。<br>
<br>
ノンフィクション的な読み物としては、ティモシー・ライバック<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4163721207/">『ヒトラーの秘密図書館』</a>（文藝春秋）がちょっといいかな。ヒトラーの蔵書をあちこち追って、その書き込みなどからヒトラーの思想形成を追う本。まったく目新しい発見があるわけではないし、またかなりの部分は憶測にはなっている。でも多少本を読むことに関心のある本稿の読者諸賢にはおもしろいんじゃないかな。本が人を作るのか、それとも人が先にあって本が選ばれるのか。ヒトラーはやっぱり変なやつだったんだけど、この本を読んでいなかったらどうなっただろうか、とか、歴史にIFはないとはいえ、ついつい考えてしまうよねえ。<br>
<br>
こうしてみると、そんなにたくさん奨めたい本があったわけじゃないな。でも四冊もあれば十分でしょう。ではまた来月。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1249697.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1249697.html</link>
<description>担当者より：山形浩生さんの書評連載の2009年末のものです。年末に山形浩生さんが強くプッシュなさっていた本は何なのか――ご一読ください。

配信日：2009/12/24


年末から正月にかけて読む本を買いためておこうかと思っている読者諸賢よ。もしぼくのこの連載を本当に本選...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-02-05T13:30:04+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>山形浩生さんの書評連載の2009年末のものです。年末に山形浩生さんが強くプッシュなさっていた本は何なのか――ご一読ください。<br>
<br>
<u>配信日：2009/12/24</u><br>
<br>
<br>
年末から正月にかけて読む本を買いためておこうかと思っている読者諸賢よ。もしぼくのこの連載を本当に本選びの参考にしているのであれば、いま買って読むべき本はまず何をおいても服部正也<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4121902904/">『ルワンダ中央銀行総裁日記』</a>（中公新書）だ。ずいぶん昔の本なのだけれど、長いこと絶版だったのが、この十一月にめでたく増補されて復刊した。<br>
<br>
著者は日銀マンだが、ＩＭＦの技術援助の一環として、一九六〇年代半ばにルワンダの中央銀行総裁として派遣される。そこはかつての宗主国ベルギーが、怪しげなコンサルを通じて自国企業の利益のためだけに各種政策運営をしており、中央銀行ですらまともな帳簿もない状況。<br>
<br>
著者は帳簿の整理から初め、各種の妨害工作にも負けずに、国の発展に資する金融経済政策を次々にうちだし、見事に国を立て直す。その様子が実に生き生きと（時に義憤をあらわにしつつ）描き出される。<br>
<br>
本稿の読者なら、ぼくが開発援助がらみの仕事をしていることはご存じかもしれない。その過程で各地の途上国にいって、中央銀行といっしょに仕事をすることも多いのだ。多くのところでは、先進国や中進国からアドバイザーなるものが常駐している。その多くは、常識を超えた使えない無能だ。本国にいられると迷惑だから、僻地にとばされたのが露骨にわかる。ここまで有能な人間が派遣されたというのは、ぼくから見れば奇跡的なことだ。そして開発援助にこれほどのことができるとは！　もちろん、当事者の言として多少割り引いて読むべき部分もあるんだろうが、それにしてもすごい。<br>
<br>
さらに本書は、中央銀行の役割ということについても、多くの人の考え方を改めさせてくれる。中央銀行の役割というのは、ほとんどの人は理解していないし、またそれを理解したつもりの人の多くは、政策金利がどうしたとか流動性供給が、何とかオペが云々といったテクニカルな話で些末な専門用語をもてあそび悦に入っている。<br>
<br>
でも、この中央銀行総裁のやっていることを見ると、中央銀行とは本来そういうものじゃないことがわかる。いや、そういう部分もあるんだが、それだけではだめなのだ。かれは、実際の経済のプレーヤー――銀行や短資会社ではない、事業者も含めたプレーヤー――と直接きちんと話をする。かれらのニーズを見極め、そこにある歪みを見て、それを中央銀行として正すにはどうすればいいかを考える。中小企業の苦境に対して資金援助を提供し、無意味な規制撤廃を行い、大統領とも話をして、大統領の政策目標を実現するための手法を着実に編み出す。<br>
<br>
それにひきかえ……日本の中央銀行は、社会や政治や経済のニーズをきくことが独立性の侵害だとわめきたて、自分が長期的な確固たるフォワードルッキングな視点を持つと主張しつつ、世間の目にびくびくして朝令暮改をくりかえす。市場との「対話」なるものが一方的な要領を得ない弁明のことだと思っている。いまの日銀を見ていると、この服部正也のような人物がかつていたとはにわかに信じられないほど。<br>
<br>
実は過去一年の金融危機で、世界の多くの中央銀行はちゃんとこれをやっている。中小企業向けの追加融資や融資保証を中央銀行が実施し、必要なところにお金を出し、実際の経済にとって役立つことを、政府ときちんと協議して実施している。先週いたインドネシアでも、いまいるマレーシアでもそうだ。それにひきかえ……。<br>
<br>
本書は、ルワンダの明るい未来を確信する服部のことばで終わる。が、その後ルワンダは、ご存じの通り恐るべき大虐殺の舞台となった。今回の増補版では、それについての服部の苦渋に満ちた小論も収録している。新書だけれど、最近の無内容な量産新書とはわけがちがう、深く重い、繰り返し読むべき本だ。この手の復刊本は、出たはいいけれど増刷されることなくすぐにまた消えることも多いので、いまのうちに絶対買って<br>
おこう。<br>
<br>
今回は、この一冊だけ紹介できればぼくは満足なのだ。あとはおまけで、池澤夏樹の世界文学全集はトマス・ピンチョン<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/430970963X/">『ヴァインランド』</a>（河出書房新社）が出た模様。実はマレーシアからまだ帰っていないので、実物は見ていないけれど、長いしだらだらしているしわけわからんし、ゴジラも忍者も出てくるし、でもそういうひねくれぶりを楽しみたい人はどうぞ、実物をちょっと立ち読みしたい人は、<a href="http://cruel.org/talkingheads/vineland.html">ぼくが訳したのがあるのでこちら</a>もどうぞ。<br>
<br>
ところで<a href="http://magazineworld.jp/brutus/677/">『ブルータス』</a>でぼくと並んで出ている池澤春菜って、池澤夏樹の娘だったのか！　知らなかった。ニコニコ動画で加藤夏希相手にプロレスを熱く語っている変なネーちゃんだとしか思ってなかった。<br>
<br>
あとはやはり小説、マット・ラフ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4163286209/">『バッド・モンキーズ』</a>（文藝春秋）が出ている。軽いけれどおもしろいよ。アメリカのカレッジノベル系の作家で、つまり初期のカート・ヴォネガットみたいな、少しシニカルで饒舌で軽妙で、でもちょっと社会派的な視点も入った感じ。ヴォネガットほどすごくはないけれど、決して悪くはない。<br>
<br>
てなところ。では、みなさま、よいお年を、ぼくはまだまだ今年が終わりそうにありません。東京は凍っているようですが、クアラルンプールはたいへんお暑うございます。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1239773.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1239773.html</link>
<description>担当者より：山形浩生さんによる書評連載の第５回目です。また、著書『訳者解説』（バジリコ）に関するお話を中心にうかがった著者インタビューもアップいたしました。

配信日：2006/05/24


はいはい、『ダ・ヴィンチ・コード』（角川文庫、上・中・下）を読みましたよ。そ...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2010-01-17T04:01:26+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>山形浩生さんによる書評連載の第５回目です。また、著書<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4862381502/">『訳者解説』</a>（バジリコ）に関するお話を中心にうかがった<a href="http://www.sbbit.jp/article/13791/">著者インタビュー</a>もアップいたしました。<br>
<br>
<u>配信日：2006/05/24</u><br>
<br>
<br>
はいはい、<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4042955037/">『ダ・ヴィンチ・コード』</a>（角川文庫、上・中・下）を読みましたよ。それなりによいんじゃないですか。もっとも最後のおばさんが何もかも知ってるんなら、館長は別に焦ってダイイングメッセージなんか残す必要なかったじゃんとか、教団は謎を公表する気がなかったんなら、なぜ後生大事に面倒な手間かけて保存しようとしたのかとか、細かいことを考えだすとアレだけど、クイクイ読めるしうまくいろんな意匠やそれっぽい雑学もちりばめてあるし。<br>
<br>
この手の陰謀論や秘教だの図像学だのの楽しさというのは、何気ないものにいろいろ意味があるのだ！　という部分で、うまくはまればさっきまで何の変哲もなく退屈だった世界が、急に謎に満ち、何かを訴えかけようとしているように思えてきて、世界がさっきよりも鮮やかで意味ある存在に思えてくる。もちろんそれが高じるとトンデモで電波な妄想の世界に入り込んでしまうのだけれど。意味のないところにも勝手に意味を読んでしまうという人間の悲しい性のなせる技ではある。便乗解説書（肯定的なものも否定的なものも）もいろいろ出てきたので、興味があれば気に入ったものを手にとってみそ。<br>
<br>
さてキリスト教の裏の歴史ネタとなると、いまは「ユダの福音書」に触れなくてはいけませんね。キリスト教史上最低の裏切り者として石を投げられ続けてきたユダによる福音書が、天下の『ナショナル・ジオグラフィック』のお墨付きを得てついに復元公開された。これによると、ユダの裏切りはキリストによるやらせであった、とのこと。ユダはキリストに（他の使徒より）気に入られていたので、そういう大役を密かに仰せつかったとか。<br>
<br>
この英訳版はpdfでネットで出回っている。この文献の発見から検討・公開にいたるプロセスを描いたのがハーバート・クロスニー<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4931450601/">『ユダの福音書を追え』</a>（日経BP出版センター）。この種の古文献市場の裏はそれなりにおもしろいが、福音書自体の中身はあまり触れられていないのは残念。福音書自体もそのうち訳が出るでしょう。なかなか楽しいし、結構ストレート。敢えて汚名を着るユダの行動が淡々として胸にしみます。<br>
<br>
さて前に何度も紹介しているけれど、<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4042955037/">『ダ・ヴィンチ・コード』</a>でもポイントの一つとなる「最後の晩餐」の絵はもちろん実際の晩餐の様子を描いたものなんかではない。実は当時の人たちはあんな椅子やテーブルでなんか食事してなかったのだ。当時の人は、ごろごろ寝っ転がって食事をしていた。それを聖書のちょっとした記述から気がつき、生活習慣に関するとても楽しい本にしたてたのが、バーナード・ルドフスキー<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4306052346/">『さあ横になって食べよう』</a>（鹿島出版会）。この人の本はすべて名作なので、気に入ったら他のものもどうぞ。<br>
<br>
あと<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4042955037/">『ダ・ヴィンチ・コード』</a>のテーマの一つは、キリスト教の教会組織成立過程で抑圧された女性の復権だった。類似のテーマを扱っている京極夏彦<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4062735350/">『絡新婦の理』</a>（講談社文庫）は、ぼくは<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4042955037/">『ダ・ヴィンチ・コード』</a>よりおもしろいと思うし、よい小説です。ただシリーズを一通り読んでないとわかりにくい部分もあるのが難。<br>
<br>
他には、何かな。映画はたぶん、『ダ・ヴィンチ・コード』を観るよりは、ムエタイ映画『トム・ヤム・クン！』を観に行くのがおすすめ。特に南米のカポエラとの対戦や、夏木マリみたいな悪の女帝の鞭との対戦がすばらしゅうございますよ。少しでも格闘技が好きな人は是非どうぞ。ただし、まねすると股関節がはずれそうになって非常に痛い目にあうのでご注意を。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1220685.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1220685.html</link>
<description>担当者より：第４回目の山形浩生さんの書評連載です。著書『訳者解説』（バジリコ）も好評発売中ですので、併せてお読みください。

配信日：2006/04/26


前回ちょっと建築ネタを振ったが、住宅建築関連の本をいっぱい見ているのです。中でも、10坪（坪というのは3.3平米の...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2009-12-13T18:26:17+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>第４回目の山形浩生さんの書評連載です。著書<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4862381502/">『訳者解説』</a>（バジリコ）も好評発売中ですので、併せてお読みください。<br>
<br>
<u>配信日：2006/04/26</u><br>
<br>
<br>
前回ちょっと建築ネタを振ったが、住宅建築関連の本をいっぱい見ているのです。中でも、10坪（坪というのは3.3平米のことですわよ）くらいの敷地に建てる、マッチ棒みたいな家の工夫は見ていて楽しい。細野透<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/453216480X/">『ありえない家　トーキョー狭小住宅物語』</a>（日本経済新聞社）はなかでも特に変な家数件の成立をたどった楽しい本。「建築賞狙いでいけ！」という施主もすごいが、それに応えた建築家の解が実に異常。家を買ったり建てたりする人は、これを読んで自分の覚悟のほどを再検討するがよろしいかと。<br>
<br>
また、実際に建てる人は杉浦伝宗<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4062691760/">『それでも建てたい!!　10坪の土地に広い家』</a>（講談社）がエッセンスをうまくまとめていて、しかもそれが日本の伝統的な建築様式とも似通った解になっているのに感心。<br>
<br>
あと、いま日本で住宅の話をするなら、荒川修作センセイの天命反転住宅は避けて通れないところ。<a href="http://www.architectural-body.com/mitaka/">まずは見て！</a>　この幼稚園のできそこないみたいな代物が住宅！　しかも中身はもっとすごいよ。段差だらけで普通の生活はまず不可能、さらには既成部品が使えないために、50平米かそこらの住宅がものすごい価格になっちゃってるとか。<br>
<br>
これは何？　と思った人は、こいつを特集した<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4891765666/">『水声通信』１号</a>（水声社）を読むと笑える。こんなバカな建築を、各種の建築家や評論家たちがおべんちゃらで持ち上げている。ちなみに上のページでも、何やら最近は脳科学の意匠をまとったお説教屋さんに堕している茂木健一郎がつまらないヨイショをしているのが読めるでしょ。命ですか。モーツァルトモードですか。チューリングの外にある世界ですか。へえ、ちゅごいでちゅねー。<br>
<br>
ところがそんなにスバラシイはずの住宅が、なぜかさほど売れていないとか。不思議だねえ。ここを絶賛している建築家さんや評論家さんたちは、なぜここを買って住もうとしないんだろうねえ？　かれらの発言は、しょせん行動や責任をともなわない空疎な代物でしかないからだ。唯一、自分の発言に責任を持って買ったのはある女性作家だけだともきく。ぼくはその点で彼女を尊敬する。<br>
<br>
科学書系でおもしろかった本がトム・スタッフォード、マット・ウェッブ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4873112710/">『Mind Hacks』</a>（オライリージャパン）。すばらしい。脳科学の本はたくさんあるけれど、単に結果を教えるだけでなく自分で自分の脳を使ってあれこれ実験してみようという、科学する心の見本みたいな一冊。勉強にもなるし、それを確認するための実験も楽しい。自分でいろいろ試して見たい人は是非。<br>
<br>
社会問題系では、ちょっとイスラムづいているのだ。小杉泰<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4815805350/">『現代イスラーム世界論』</a>（名古屋大学出版会）は、イスラームの発端から解き明かして未来のイスラム世界まで考察した大著でたいへん勉強になりそうだが、本文だけで800ページの大著でちょっと尻込み。<br>
<br>
そんな人には池内恵<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4163680608/">『書物の運命』</a>（文藝春秋）を。安易な書評集かと思ったら、時事状況をふまえて国内の中東イスラームをめぐる物言いをわかりやすくまとめたとてもよい本。とくに、「オリエンタリズム」という概念を広めたサイードとその追従者たちに対する落ち着いた、だが鋭い批判は一読に値する。<br>
<br>
そうそう、書きかけの最後で、あの構造主義人類学の重鎮レヴィ＝ストロースの大著<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4622081512/">『神話論理』</a>（みすず書房）の邦訳刊行がついに開始されたことを知る。30年以上にわたって待たされた本なので、たぶんこれからあちこちでヨイショが見られることになると思う。絶対に買ってはいけませんよ（といって、8000円の本をおいそれと買うヤツもいないか）。この本はねえ、学問のふりをして実は単なるブンガク、という困った代物で、その批判は長くなるから<a href="http://cruel.org/other/rumors2006_1.html#item2006041801">このあたり</a>に書いておいたものを読んでや。まあ、刊行されたことくらい知っておくと、なんとなく教養ありげな顔ができる、こともある、かなあ。無理か。<br>
<br>
ただ、かれの洞察はたいへんに面白いので、もっとお手軽な本は読んでおく価値あり。講演録<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4582765432/">『レヴィ＝ストロース講義』</a>（平凡社ライブラリー）あたりは読みやすいし、一部の生命倫理なんていうものが単に前提となる習俗の問題でしかないことをあっさり指摘したりして大変に楽しいのでお薦め。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1213429.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1213429.html</link>
<description>担当者より：山形浩生さんの書評連載第３回目です。ちなみに山形さんの現時点でのもっとも新しい訳書は『現代の二都物語』（日経ＢＰ社）です。『訳者解説』（バジリコ）を読んで山形さんの訳した書籍に関心を持たれた方にもお薦めです。

配信日：2006/03/22


こないだ近所...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2009-11-30T01:42:02+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>山形浩生さんの書評連載第３回目です。ちなみに山形さんの現時点でのもっとも新しい訳書は<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4822247783/">『現代の二都物語』</a>（日経ＢＰ社）です。<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4862381502/">『訳者解説』</a>（バジリコ）を読んで山形さんの訳した書籍に関心を持たれた方にもお薦めです。<br>
<br>
<u>配信日：2006/03/22</u><br>
<br>
<br>
こないだ近所の後楽園にいったら、コスプレ大会に迷い込んでしまい、浦島太郎状態。コスプレやってると遊園地の乗り物も無料（一部を除く）なので、へんなコスチュームの連中がそこらじゅうにうろついている様子はなかなか非日常的。ディズニーランドの着ぐるみ部隊など圧倒するすさまじいボリュームで、遊園地側としてもこれは雰囲気盛り上げられてお得だなあ。そしてそうした連中が、コミケと同じく非常に楽しげに写真をとりあって交流している様はなかなかかわいらしくてよろしい。<br>
<br>
とかく年寄りの支配するメディアでの若者論といえば、キレやすいだのゲーム脳だの道徳意識が薄いだの犯罪が多いだの、おたくのヒッキーでつきあいが希薄だのというものだけれど、この現場をみるとおたくでもそれなりのつきあいはある。それを含め、各種の若者論を検証して見直しているのが浅野智彦編<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4326653116/">『検証・若者の変貌』</a>（勁草書房）。ちまたで言われるほとんどすべての通俗若者論について、データに基づいた反証をしてくれる非常にためになる本。環境変化にともなって形態は変化しても、友情も道徳も道義心もすべて健在。すばらしい。<br>
<br>
が、そうした通俗若者論は単に実態を見ない年寄りの冷や水なのか、という点をもっと怖い視点で掘り下げたのが芹沢一也<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4062723565/">『ホラーハウス社会』</a>（講談社プラスα新書）。これもまた、少年犯罪についての世間的な認識を一つのテーマにしている。もう一つは精神障害者。少年の凶悪犯罪はちっとも増えてない。精神障害者の犯罪も増えていない。にもかかわらず、思いついたように問題視されて制度が変えられてしまう。それはむしろ、社会が変わったのだ、というのが著者の主張だ。社会が勝手にハードルを上げたがために、これまで問題でなかったものが問題視されるようになったのだ、と。<br>
<br>
昔ポール・オースターにインタビューしたとき、かれの「人間心配事一定の法則」なるものをきかされたことがある。あらゆる時点において、人がかかえている悩み事の主観的な重みの総量は一定である、という法則だ。昔の人は、明日の食い物が手に入るか、病気はどうすれば直るか、といった大きなことで悩んでいた。でもそういう大きな悩みが消えても、人は悩みが減るわけではなく、ネクタイが曲がっているとか、化粧ののりが悪いとか、くだらない心配をたくさんするようになったり、あるいは昔ならどうでもよかった小さな悩みをやたらに重要視するようになる。かつて生死にかかわる問題について悩んだのと同じくらい真剣に、携帯電話の電池の減りだの狂牛病だの地球温暖化だのを悩むようになる。結果として、それらを足してみると（端から見れば単なるせこいグチでしかなくても）主観的にはまったく同じだけ悩みを人は持ち続けるのである、と。<br>
<br>
これはあくまで笑い話だったんだが、『ホラーハウス社会』が述べているのはまさにそういうことだ。大きな問題がどんどん片付くにつれて、人は小さい問題を心配するようになる。心配するべきことがなければ、自分の基準をあげてでもそれを捏造する。そして社会の機能とはひょっとするとまさに、人々のために（お化け屋敷が次々に新しいお化けを繰り出してくるように）新しい心配事を作ってあげることなのかもしれない。すると人々がホラーハウス社会から出ることは永遠に……。<br>
<br>
さて歴史の保存なんてのも、そうした社会のでっちあげた新しい（が実はどうでもいい）悩みの一つかもしれない。最近オープンした表参道ヒルズは、前に建っていた同潤会の汚らしい場違いな西洋長屋に不健全なフェティシズムを抱く人たちにぎゃあぎゃあ言われて、そのために町並みに配慮したとか保存がどうしたとか能書きをたれている。肝心の表側は全然だめ。特にあの昔のアパートを復元した部分は最低。あれは復元する価値なんかない建物だったんだから。まちがったところで保存しなくていいものを保存してどうするね。ノスタルジーだけで保存を云々しちゃいけない。坂口安吾「日本文化私観」（新潮文庫に入っている<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4101024022/">『堕落論』</a>が、ほかの名エッセイも収録してお得用だと思う）を読み直そう。役に立たないものは壊せ、というあの論を、何か反語的に解釈したり、隠喩的に解釈したりするジジイどもが多いけれど、あれは本当に素直に文字通り解釈すべきだと思う。<br>
<br>
でも、表参道ヒルズは、あまり人が出向かない裏通りのほうを歩いてみるようおすすめする。こっちは道を挟んだ建物同士の会話があって、なかなかよい町並みができている。名前だけ使われてあまり腕を振るえなかったとおぼしき安藤忠雄の、精一杯の自己主張かな。ちなみに、今出ている『Domani（ドマーニ）』2006年４月号に、藤原紀香と安藤忠雄の対談という、とうていかみ合うとは思えないシロモノが出ていて、賢そうなことを言おうとして滑っている（それもかなりの部分が加筆改訂済みと思しいのに）藤原紀香の痛々しさのために立ち読みする価値はあるかも（重くて腕が疲れる雑誌ですが）。ではまた。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1207360.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1207360.html</link>
<description>担当者より：新刊『訳者解説』（バジリコ）が好評発売中の山形浩生さんの書評連載第２回目（2006年２月配信）です。なお、本文で言及されている『大相撲の経済学』はその後、ちくま文庫に入りました。

配信日：2006/02/22


今回はガーナで書いているので、出発前に荷物に放...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2009-11-20T03:45:05+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>新刊<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4862381502/">『訳者解説』</a>（バジリコ）が好評発売中の山形浩生さんの書評連載第２回目（2006年２月配信）です。なお、本文で言及されている『大相撲の経済学』はその後、ちくま文庫に入りました。<br>
<br>
<u>配信日：2006/02/22</u><br>
<br>
<br>
今回はガーナで書いているので、出発前に荷物に放り込めたものに限られるのです。本は重い！　それ以外に、別の依頼でホリエモンの本を大量に読まなくてはならないので、それで残ったところに入る本となると、かなり厳選。とはいえ、堀江本は実に中身が薄いので、空港までに二冊片付けて次々に捨てて、新しいのを補給できたのは不幸中の幸い。<br>
<br>
さて最初からかばんに入っていたのがマイケル・Ｓ．ガザニガ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4314009993/">『脳のなかの倫理』</a>(紀伊國屋書店)。これは名著！　まだ２月だけれど、今年一冊だけ科学書を読むならこの一冊にしてほしいと今から断言してもいい。<br>
<br>
ガザニガは、左右の脳半球の働きに関するパイオニア的な研究を果たした脳科学者だ。この本は、ガザニガが大統領のES細胞利用研究に関する倫理検討委員会に参加したときのフラストレーションをきっかけに書かれている。この手の倫理委員会に出てくるのは、倫理学者だの宗教家だのといった人々だ。この人たちは、やれ生命の尊厳が、とか死生観が、とかきいたふうな口をきく。でも具体的にそれって何なの、と聞かれる、この人たちは一切答えることができない。「有識者」を名乗るくせに実は何ら見識もなく、あまりなじみがないから何となく不安、というのを小難しく言うだけだ。さらにこの手の論者はすぐにあり得ない極端な話を持ち出して、議論をまぜっかえす。ヒトラーのクローンを作る人が出たらどうするとか、人間とウサギの合いの子をつくる科学者が出てきたらどうする、とか。<br>
<br>
ガザニガはそういうのにあきれはてて、もっときちんと倫理や道徳を考え直さないとダメだ、と述べる。自分の思いこみを開陳するだけでなく、今後どこで人間が妥協点を見いだすべきか、脳や遺伝に関する知識をベースにして新しい倫理や道徳を構築するしかないだろう、と述べる。そんなことが可能か？　ガザニガは可能だと言う。<br>
<br>
脳には、最低限の道徳や生命観があらかじめプログラミングされているはずだから、と。ぼくはガザニガの議論に諸手をあげて賛成だ。たぶん多くの人は、ガザニガの立場が楽観的すぎると思うだろうけれど、でもいまこれ以外の立場があるだろうか？　いまの時代における新しい倫理とは何なのか、そしてそこで各種の信念体系、例えば宗教が果たすべき役割とは何なのかを考えなおすにあたり、他にどんな道があるだろう。文章も平易で、科学的な中身とその意味合いの解説が見事にバランスされたすばらしい一冊。訳も見事。<br>
<br>
同様の問題提起を別の角度から行っているのが、中島隆信<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4492313451/">『お寺の経済学』</a>（東洋経済新報社）。江戸時代の制度設計により葬式、お墓と檀家制度と不可分となり、それ故に堕落したお寺の現在について、各種のヒアリングや調査をもとにしつつ、簡潔な読み物として経済面からまとめた好著だ。<br>
<br>
といっても、別にお寺経営のあれこれが並ぶ本じゃない。なんとそもそもの仏教思想の発端と展開からはじまり、各種の制度がどのようにお寺と信仰のあり方を規定してきたかを語る、実におもしろい本だ。同時に、ほとんど知られていないお寺の裏事情もわかって、のぞき見的な楽しみもいっぱいで、うんちくやトリビアのネタ元としても有用。そして最後に、今後の仏教は本当の信仰に基づいた宗教に立ち返る必要があるのではないかという主張に経済学的視点から到達してしまうのは驚くばかり。<br>
<br>
同じ著者の<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4492313591/">『障害者の経済学』</a>（東洋経済新報社）もすばらしい本で、心優しい（つまり軟弱な）学者や知識人がなかなか正面きって扱えないテーマを、やさしく、でも厳しく分析する珍しい本だ。『お寺』と同じ、親の愛情がかえってマイナスに働き、各種支援や優遇策が逆にかれらの自立を阻害する構造の分析は、高度な中身なのに実に明解。そしてそれが現在、何かと話題になるニートだの引きこもりだのの問題とも同根であることもきちんと指摘される。<br>
<br>
子細は省くが、当事者でありながら当事者意識を捨てたから書けた本だ、というあとがきの一言には深い含蓄がある。でも、重いテーマにもかかわらず、実に軽く読み流せる書き方になっているのは驚く。『お寺』と同じく電車の中で楽に読めるのでおすすめ。同じシリーズの<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4492313303/">『大相撲の経済学』</a>（東洋経済新報社）も今度読んでみよう。<br>
<br>
あと、ここ一カ月の世界経済のビッグニュースは、ライブドアがらみの話をのぞけば（これについては別のところでいくつか駄文を書いた）、アメリカFRB議長グリーンスパンの引退と、ベン・バーナンキの就任だ。田中秀臣<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4062132605/">『ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝』</a>（講談社）。かれの思想や主張、そしてかれが公然とバカにする日銀のあほさ加減、さらには今後の世界経済にとっての意味合いなどを簡潔にまとめた、世界初のバーナンキ解説本だ。短く、要点を押さえたよい本で、見識のない新聞や雑誌記事なんかとは比べものにならないレベルの高さと読みやすさ。流し読みで受け売りするにも便利。内容的に今読まずにいつ読むか、という一冊なので、古びないうちに一読しておくことを薦める。<br>
<br>
そして最後に小説。これまたまだ二月ながら、たぶん今年出る小説として有数の水準を誇るジーン・ウルフ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4336047367/">『デス博士の島その他の物語』</a>（国書刊行会）。でも前回の<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4105056050/">『ロリータ』</a>と同じくこれまた息抜きにはならない。ジーン・ウルフの小説の常として、決してわかりやすくはない。細部への気配りと十分な記憶力、ことば遊びへの感性、そして反復読みが要求される面倒な代物。さらに普通なら細部を書き込むことでリアリティは増し、作り物感が減るのに、ジーン・ウルフの場合、書けば書くほど技巧性と人工性が露骨になり、世界の閉塞感が高まるのが特徴で、本書は特にその傾向が強い。<br>
<br>
訳者解説では、ウルフの作品は読書の海への誘いだということになるけれど、ぼくはそれはウソだと思う。表題作を読んで――特にその最後の部分のさりげない残酷さを見て――ぼくはしばらく小説というものを読む気が失せてしまった。この本は小説というものの一つの到達点と、そしてその限界を体現してしまっている。それがわかればすごいけれど、でも一方で、知らぬが仏というのは本当だなあ、と嫌みぬきで思う一冊でもある。<br>
<br>
さて、日本に帰る頃にはまたおもしろい本が出ているかな。ではまた。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>
<item rdf:about="http://bisista.blogto.jp/archives/1199438.html">
<title>山形浩生「山形月報！」</title>
<link>http://bisista.blogto.jp/archives/1199438.html</link>
<description>担当者より：評論・翻訳などの分野でご活躍中の山形浩生さん。先日刊行された『訳者解説』（バジリコ）も話題になっています。「週刊ビジスタニュース」では月に一度、書評の連載をご執筆いただいております。この原稿はその連載「山形月報！」の第１回目のもので、数年前の...</description>
<dc:creator>bisista_news</dc:creator>
<dc:date>2009-11-07T18:15:21+09:00</dc:date>
<dc:subject>山形浩生</dc:subject>
<content:encoded><![CDATA[<b>担当者より：</b>評論・翻訳などの分野でご活躍中の山形浩生さん。先日刊行された<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4862381502/">『訳者解説』</a>（バジリコ）も話題になっています。「週刊ビジスタニュース」では月に一度、書評の連載をご執筆いただいております。この原稿はその連載「山形月報！」の第１回目のもので、数年前のものではありますが、当連載における山形さんのスタンスも記されているために掲載いたしました。<br>
<br>
<u>配信日：2006/01/25</u><br>
<br>
<br>
どうも。今回からぼくが駆け足書評みたいなのを連載することになったので、よろしく。まずは前口上から。<br>
<br>
ぼくはしょせん、リーマン稼業の片手間に雑文を書いたり翻訳をしたりしているだけの人間だし、本来であればこんなメルマガの書評欄としては、まあ話題のビジネス書でも軽くふれて、時々ご期待に添って変なサブカルがかった変化球でも投入しておけばいいことになるんだろう。<br>
<br>
でも、いまのメディアの状況を見ると、それじゃ足りない。一般読者は、まともな書評サービスを受けていない。主流文化の中心できちんと評価を下されるべき本が、ちっともきちんと論じられていない。問題作になればなるほど、専門家たちはあえて猫に鈴をつけるようなことをしたがらないからだ。<br>
<br>
おかげで一般読者は、そうした本の重要性をきちんと認識させてもらえないまま、どうでもいい本のはなしばかり読まされる。そして日本の文化風景に、その分ぽっかりと大穴があいてしまうのだ。しょうがない、ぼくがやる。及ばずながらこの欄でも、すこしでもその穴をうめるように重い本も扱うようにする。うっとうしいだろうが、でもそれはビジネスマンとしても持っておくべき文化的教養となるものだから、がまんするように。<br>
<br>
現在、その代表格はユン・チアン＆Ｊ・ハリデイ<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/406206846X/">『マオ』</a>（上下、講談社）。これは、欧米では昨年のベストセラーにして最大の話題作だし、中国の存在感が世界的に高まっている今、その開祖について知っておくのはビジネス的にも重要だ。そしてこれをどう評価するかで、中国に対するスタンスも変わってくる。ところがこの本、日本では売れてはいるのに、発売後二カ月たってもまともな書評がほとんどない。<br>
<br>
この本によれば、現代中国が国民統一手段として使っている毛沢東像――革命の英雄、人民の父、天才的ゲリラ戦術家――はまったくのウソだという。毛沢東はあらゆる点で無能で、残虐で好色で権力欲が強く他人の足を引っ張って手柄を横取りし、後でそれを粛正して抹殺するのがうまかっただけ。そしてその手口の悪辣さときたら、読みながら胸が悪くなるほどだ。チアンとハリデイは、旧ソ連の資料を大量に使い、さらに無数のインタビューによってそれを補強しており、力作であるのはまちがいない。<br>
<br>
が、その描き方はきわめて疑問。新資料に頼る一方で、本書は毛沢東自身の著作その他をほとんど顧みない。毛沢東思想の形成や発展についても、まったく検討がない。毛沢東のやった蛮行の中で最悪のものは、数千万人を餓死させた大躍進と、そして文化大革命だった。ところがチアンはこれらを毛沢東の権力闘争の一部として描こうとして、それ自体が持っていた意味を見過ごす。<br>
<br>
毛沢東は、古い中国文化を破壊したがる野蛮人だった、と本書は描く。でも、なぜそれを破壊したかったの？　本書はそれを分析できない。野蛮人だったと述べてそれでおしまい。それでは現在の伝記としては役に立たないのだ。<br>
<br>
ほかにも書きたい点はあるがすでに長くなりすぎている。が、本書の内容については、すでに欧米や台湾などではかなりの批判が起きていることは念頭におくべし。今後、日本でもそうした状況が伝えられることを願いたいけれど、どうかな。2006年１月現在ではいちばん長くてまともな書評は『CUT』（2006年２月・３月号）掲載のぼくの書評だったりする。<br>
<br>
まったく、何でこんな重要な本のまともな書評がサブカル芸能雑誌にしか出ないんだい。本書は、その存在は知らなきゃいけないし、中身についてちょっときいたふうなことがいえたほうがいい。読めば無法におもしろいことも保証しよう。でも、内容を鵜呑みにしないこと。その意味で必読か、といえばそうじゃない。ただし手には取るべし。重さを味わうだけでもいいから。<br>
<br>
さて、もう少し一般のビジネスマンに近いところでは、菊池信輝<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4582832857/">『財界とは何か』</a>（平凡社）。『マオ』は教養なので、読んだふりさえできればある意味で十分だけれど、本書はちゃんと読んでおいたほうがいい。<br>
<br>
財界というと、経団連があれこれ発表したりという以外に具体的なイメージを持つ人は少ない。でも、財界の意向こそが常に戦後の日本の政治を左右してきた。そしてそれは、なにやら料亭の奥座敷でナントカ老と政治家が談合というような話じゃない。財界は政治と癒着していると思われがちだけれど、でも利用するということは借りを作ることだ。それは将来、企業活動に政府が介入する口実になる。財界はそれを避けようとしてきた！　そして現在は、トヨタの奥田会長が下手に政府の各種委員会で活躍して政策に関与しているが故に、財界は靖国問題なんかで言いたいことが言いにくくなって、かえって困っているのだ、という分析。公開資料だけでここまでの分析ができるとは驚くばかりで、今後の日本の政治動向を考えるにも重要。これは買って、流し読みでも目を通すべき本。<br>
<br>
もうちょっとすぐに目先の利用ができそうな本が、アレンド・レイプハルト<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4326301589/">『民主主義対民主主義』</a>（勁草書房）。日本は諸外国に比べて地方分権が遅れているとか、公務員が多いとか、女性の社会進出がないとかいう議論はよくきくし、そのたびにその議論に都合のいい外国が例として持ち出される。でも、どんな面でも日本より優れたところはあるだろうけれど、何でも一番でなきゃいけないわけじゃない。バランスってもんもあるんだし。全体として日本の政治って世界の中でどのあたりの位置づけなの？　<br>
<br>
本書は世界三十六カ国の中での各種位置づけを行った政治研究だけれど、意外や意外、日本ってなんでも中庸で、何で見てもそんなに悪くないんだね。外国と比べたがり病の人に対抗するためのネタ本として、手元に持っておこう。とりあえず、図表だけざっと流して見ておけばすむ。<br>
<br>
手軽に読める本としては原田泰、鈴木準<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4535554560/">『人口減少社会は怖くない』</a>（日本評論社）。日本の人口が減少に転じて、変に危機をあおりたがる人が多いけれど、人口が減ってもそんなに悪いことはないのだと冷静に教えてくれるよい本。特に最後の、江戸時代における人口減少社会の理想は隠居だった、というのは示唆に富んでいる。このくらいの本は、通勤途上に読みなさい。新事業のヒントなんかもあることだし。<br>
<br>
さて最後は小説で息抜き、といいたいところだけれど、なかなか息がぬけないのがナボコフの新訳<a href="http://www.amazon.co.jp/dp/4105056050/">『ロリータ』</a>（新潮社）。ロリコンの語源となった『ロリータ』は、これまで翻訳が悪いと言われ続けていた。原文は、古今の名作のパロディやことば遊びがテンコ盛りだが、そうした部分が全部消えている、と。だから言葉遊びに長けた若島正が改訳版を出すときいて小躍りした人は多いんだが……出てみるとこれが拍子抜け。<br>
<br>
まず、既存の訳は文庫に入るときに大幅に改訂されていて、実はそんなに悪くなかった、と若島は言う。そして新訳では、原文のへんな英語やことば遊びを重視したとは言うものの、冒頭のＬ音の連続という最もあからさまな遊びをあっさり黙殺している。うーん……確かに、翻訳としての質は上がってるんだが、でも改訳するほどの向上だろうか。特に前の訳がそんなに悪くなかったんなら、ぼくはもっと超絶技巧翻訳を期待していたんだが、その期待が非現実的だっただけかもしれない。でもこれなら改訳しなくても……と言いつつ、久々に通して読んだ『ロリータ』はとても楽しく、そして若島が解説で指摘する、ロリータのその後の運命というのにも今回初めて気がつかされたという点でとても有益ではあったのだけれど。<br>
<br>
まあよい訳なのはまちがいないので、萌えがどうしたとかいう軽薄な物言いが跋扈している現在、その原点に帰る意味で一読なさっちゃいかが。これも世間的な教養の一部ではありますので。<br>
<br>
今回はえらく長くなってしまったが、前振りが長かったので許してくださいな。次回からはもっと手短にいきます。<br>
<br>
<br>
●山形浩生（やまがた・ひろお）<br>
大手シンクタンク研究員、評論家、翻訳家。<br>
サイト：<a href="http://cruel.org/jindex.html">YAMAGATA Hiroo Official Japanese Page</a>]]>
</content:encoded>
</item>

</rdf:RDF>
