担当者より:2008年にライターの斎藤温さんが、Perfumeを通して女性アイドルグループについて論じた一文です。ご一読ください。
配信日:2008/05/28
Perfume初のオリジナルアルバム『GAME』がオリコン初登場1位を獲得、2008年5月12日には売り上げ累計25万枚を突破し、プラチナアルバムに認定された。女性アイドルグループに関するニュースとしては久しぶりに明るい話題なのだが、個人的にはなんとも複雑な思いがある。
Perfumeは広島県出身の女性3人組アイドルグループだ。若手サウンドクリエイター・中田ヤスタカがサウンドプロデュースを担当し、テクノポップを基調とした楽曲で話題となっている。彼女たちがメディアに登場する時によく目にする煽り文句は「テクノポップアイドルグループ」であることと「結成8年目」ということだ。Perfumeの結成はメンバーが地元広島のダンススクールに通っていた2000年にまで遡る。確かに女性アイドルの旬は短く、キャンディーズやピンクレディー、おニャン子クラブ、SPEEDがブームだったのはたったの2~3年程度だ。そのことを考えてみれば「アイドルを8年もやっている」というのは確かにすごい。しかし現在、女性アイドルグループが長期にわたって活動しているのは珍しいことではないのだ。
わかりやすい例として、90年代後半にデビューし、2000年代を代表する女性アイドルグループとなったモーニング娘。はメンバーの入れ替えがありながらも活動10周年を迎えている。「デビューからブレイクまでに8年」というが、他にも活動期間5年以上の女性アイドルグループはいくつも存在した。
現在熱狂的なファンがついているのは、地道な活動を経て人気を獲得していったグループが多く、「若くて可愛らしい女の子」なだけではファンがつかないのが昨今のアイドルの現状である。活動期間が長いグループは完成度の高いパフォーマンスやステージングを見せてくれるので、目の肥えたアイドルファンの支持を得られやすい。Perfumeも「ダンスやトークの完成度が高い」と評されるが、それは長い下積みの賜物だろう。しかしPerfumeのような幸運な例は珍しく、熱心なファンが数多くいながらも残念なことに解散してしまったケースも数え切れないほどあるのも事実だ。
例を挙げるならば、昨2007年夏に開催されたあるテクノイベントにPerfumeと共に出演したアイドル・デュオ、リトル☆レンズは5月25日に解散することが決定している。本稿が公開される頃にはもう解散ライブが終わっているはずだ。同じイベントに出ていたアイドルグループでも、かたやオリコン1位、かたや解散ということから女性アイドル業界のタイトロープさがわかってもらえるかもしれない。
多くのアイドルファンは、自分たちの応援しているアイドルグループが「解散してしまうのではか」と戦々恐々としながらも熱心に応援している。Perfumeが2006年の夏にファーストベストアルバムをリリースしたときには解散するという噂がファンの間でまことしやかに囁かれた。ちょうど2006年から2007年にかけて、いくつもの女性アイドルグループが解散していったこともあり、その噂は信憑性が高かったのだ。
しかし、Perfumeは首の皮一枚のところで残ってくれた。それは楽曲が良かったために熱心なファン以外の音楽ファンも購入したから、というのが通説となっている。ちょうど同時期にサウンドプロデュースを務める中田ヤスタカが音楽ファンからの注目を集めつつあり、上手く時流に乗れたということなのだろう。
中田がサウンドプロデュースを手がけたのは、Perfumeがインディーズながら全国流通をすることになった2003年からである。その当時、中田はまだ有象無象のサウンドクリエイターの一人であり、Perfumeと同じようにいつ消えてもおかしくない存在だった。その中田が注目を浴び、Perfumeと良い相互効果を生んだのも運が良かったからだろう。「時代と整合性があった」と言えば聴き触りがよく聞こえるのかもしれないが、成功した後になって「先見の明があった」と言っても唇寒しである。もし、Perfumeが同じようにテクノポップを全面に打ち出していたとして、中田ではない別の誰かがサウンドプロデュースを行っていたら彼女たちがブレイクしていたか、というとそれは疑問である。
今、思い返してみてもPerfumeは決して特別な存在ではなかった。歌も踊りもクオリティが高く、一生懸命に活動しているグループの一つに過ぎなかったのだ。だが、他のグループと違い、奇跡的に運が良かった。それはもちろん素晴らしいことだ。Perfumeに幸運の女神が微笑み、その前髪をつかみ取ることができた実力があったのは事実だ。だが、楽曲に恵まれ実力がありながらも運が無く解散してしまったアイドルグループを筆者はいくつも見てきた。彼女たちもそうなってもおかしくない状況にあった。
だからこそ、最近になってPerfumeを知った人たちが、ブレイクするまでの彼女たちの苦節の期間を「泣ける」と言っているのが不思議でならない。Perfumeのファンによって彼女たちの活動が某ドキュメンタリー番組風にまとめられた動画が、ニコニコ動画などの動画共有サイトで「泣ける」と評判になっていることにも私は首をかしげている。その涙は誰のために流されているのだろうか? Perfumeのためになのか? 本当に? Perfumeを応援している自分に酔って流された涙なのではないのか?
もしただ単純に泣いてストレスを発散したいのならば、他のパッとしない女性アイドルの現状をチェックして欲しい。解散していったアイドルグループについて調べてみるのも良いだろう。そうすればいくらでも泣くことが出来る。しかし、それは同時に彼女たちとそのファンを愚弄することになるのも忘れないで欲しい。彼女ら・彼らは別に同情して欲しくて活動をしているわけではないのだ。「下積みの辛さを思って泣く」というのはそういうことだ。上から目線の同情によって流された涙ほど当事者達にとって鬱陶しいものはない。
今まで知らなかったものから新鮮な感動を覚える、というのはなかなか得難い体験だ。だからといって、浮かれてそのろくに知らなかったものをイメージだけで語るのは恥ずかしいことでもある。Perfumeもこれから安易に消費されていくことなく活動を続けていって欲しいが、女性アイドル業界というのは「一寸先は闇」の世界だ。1年後どうなっているかは1年後しかわからない。
個人的には、Perfumeのブレイクがきっかけとなって女性アイドル業界が活性化してくれればこんなに嬉しいことはない。実際にチャートを見ると女性アイドルは復調の兆しが見えてきた。長い下積みを経て、「プロのアイドル」としてパフォーマンスを見せてくれるグループがちゃんと評価される「アイドル春の時代」は意外と近いのかもしれない。
●斎藤温(さいとう・あつし)
ライター。1982年生まれ。
配信日:2008/05/28
Perfume初のオリジナルアルバム『GAME』がオリコン初登場1位を獲得、2008年5月12日には売り上げ累計25万枚を突破し、プラチナアルバムに認定された。女性アイドルグループに関するニュースとしては久しぶりに明るい話題なのだが、個人的にはなんとも複雑な思いがある。
Perfumeは広島県出身の女性3人組アイドルグループだ。若手サウンドクリエイター・中田ヤスタカがサウンドプロデュースを担当し、テクノポップを基調とした楽曲で話題となっている。彼女たちがメディアに登場する時によく目にする煽り文句は「テクノポップアイドルグループ」であることと「結成8年目」ということだ。Perfumeの結成はメンバーが地元広島のダンススクールに通っていた2000年にまで遡る。確かに女性アイドルの旬は短く、キャンディーズやピンクレディー、おニャン子クラブ、SPEEDがブームだったのはたったの2~3年程度だ。そのことを考えてみれば「アイドルを8年もやっている」というのは確かにすごい。しかし現在、女性アイドルグループが長期にわたって活動しているのは珍しいことではないのだ。
わかりやすい例として、90年代後半にデビューし、2000年代を代表する女性アイドルグループとなったモーニング娘。はメンバーの入れ替えがありながらも活動10周年を迎えている。「デビューからブレイクまでに8年」というが、他にも活動期間5年以上の女性アイドルグループはいくつも存在した。
現在熱狂的なファンがついているのは、地道な活動を経て人気を獲得していったグループが多く、「若くて可愛らしい女の子」なだけではファンがつかないのが昨今のアイドルの現状である。活動期間が長いグループは完成度の高いパフォーマンスやステージングを見せてくれるので、目の肥えたアイドルファンの支持を得られやすい。Perfumeも「ダンスやトークの完成度が高い」と評されるが、それは長い下積みの賜物だろう。しかしPerfumeのような幸運な例は珍しく、熱心なファンが数多くいながらも残念なことに解散してしまったケースも数え切れないほどあるのも事実だ。
例を挙げるならば、昨2007年夏に開催されたあるテクノイベントにPerfumeと共に出演したアイドル・デュオ、リトル☆レンズは5月25日に解散することが決定している。本稿が公開される頃にはもう解散ライブが終わっているはずだ。同じイベントに出ていたアイドルグループでも、かたやオリコン1位、かたや解散ということから女性アイドル業界のタイトロープさがわかってもらえるかもしれない。
多くのアイドルファンは、自分たちの応援しているアイドルグループが「解散してしまうのではか」と戦々恐々としながらも熱心に応援している。Perfumeが2006年の夏にファーストベストアルバムをリリースしたときには解散するという噂がファンの間でまことしやかに囁かれた。ちょうど2006年から2007年にかけて、いくつもの女性アイドルグループが解散していったこともあり、その噂は信憑性が高かったのだ。
しかし、Perfumeは首の皮一枚のところで残ってくれた。それは楽曲が良かったために熱心なファン以外の音楽ファンも購入したから、というのが通説となっている。ちょうど同時期にサウンドプロデュースを務める中田ヤスタカが音楽ファンからの注目を集めつつあり、上手く時流に乗れたということなのだろう。
中田がサウンドプロデュースを手がけたのは、Perfumeがインディーズながら全国流通をすることになった2003年からである。その当時、中田はまだ有象無象のサウンドクリエイターの一人であり、Perfumeと同じようにいつ消えてもおかしくない存在だった。その中田が注目を浴び、Perfumeと良い相互効果を生んだのも運が良かったからだろう。「時代と整合性があった」と言えば聴き触りがよく聞こえるのかもしれないが、成功した後になって「先見の明があった」と言っても唇寒しである。もし、Perfumeが同じようにテクノポップを全面に打ち出していたとして、中田ではない別の誰かがサウンドプロデュースを行っていたら彼女たちがブレイクしていたか、というとそれは疑問である。
今、思い返してみてもPerfumeは決して特別な存在ではなかった。歌も踊りもクオリティが高く、一生懸命に活動しているグループの一つに過ぎなかったのだ。だが、他のグループと違い、奇跡的に運が良かった。それはもちろん素晴らしいことだ。Perfumeに幸運の女神が微笑み、その前髪をつかみ取ることができた実力があったのは事実だ。だが、楽曲に恵まれ実力がありながらも運が無く解散してしまったアイドルグループを筆者はいくつも見てきた。彼女たちもそうなってもおかしくない状況にあった。
だからこそ、最近になってPerfumeを知った人たちが、ブレイクするまでの彼女たちの苦節の期間を「泣ける」と言っているのが不思議でならない。Perfumeのファンによって彼女たちの活動が某ドキュメンタリー番組風にまとめられた動画が、ニコニコ動画などの動画共有サイトで「泣ける」と評判になっていることにも私は首をかしげている。その涙は誰のために流されているのだろうか? Perfumeのためになのか? 本当に? Perfumeを応援している自分に酔って流された涙なのではないのか?
もしただ単純に泣いてストレスを発散したいのならば、他のパッとしない女性アイドルの現状をチェックして欲しい。解散していったアイドルグループについて調べてみるのも良いだろう。そうすればいくらでも泣くことが出来る。しかし、それは同時に彼女たちとそのファンを愚弄することになるのも忘れないで欲しい。彼女ら・彼らは別に同情して欲しくて活動をしているわけではないのだ。「下積みの辛さを思って泣く」というのはそういうことだ。上から目線の同情によって流された涙ほど当事者達にとって鬱陶しいものはない。
今まで知らなかったものから新鮮な感動を覚える、というのはなかなか得難い体験だ。だからといって、浮かれてそのろくに知らなかったものをイメージだけで語るのは恥ずかしいことでもある。Perfumeもこれから安易に消費されていくことなく活動を続けていって欲しいが、女性アイドル業界というのは「一寸先は闇」の世界だ。1年後どうなっているかは1年後しかわからない。
個人的には、Perfumeのブレイクがきっかけとなって女性アイドル業界が活性化してくれればこんなに嬉しいことはない。実際にチャートを見ると女性アイドルは復調の兆しが見えてきた。長い下積みを経て、「プロのアイドル」としてパフォーマンスを見せてくれるグループがちゃんと評価される「アイドル春の時代」は意外と近いのかもしれない。
●斎藤温(さいとう・あつし)
ライター。1982年生まれ。
