担当者より:刊行後、すぐに重版決定の『リーダーの値打ち』(アスキー新書)が話題の山本一郎さんが、2009年の民主党政権誕生直後に書いた原稿です。著書とあわせてご一読ください!

配信日:2009/09/16


●地デジ失政関連と民主党政権●


民主党が選挙で勝ちましたね。現在、その人事の転がり方や民主党の政権運営の行く末について、報道があるごとに文字通り一喜一憂している人々が多いことかと思います。自民党政権が長かったこともあって、その間の官僚主導で行われた政策の一部に、拭いがたい失政があったのもまた事実であり、これへの民主党の適切な修正が果たしてどこまでできるのか、といったあたりが現在の主要な論点のひとつでしょう。

民主党のマニフェストの中には実現不可能っぽいものも多いよね、と国民の多くが感じつつも、日本政治の変化の可能性に国民が賭けたことで、政権交代が起きた面は大きいです。であればこそ、各方面の政策課題や取り組みに対して民主党が抜本的な政策変更を行うことで、重要な政策課題の修正が省庁のいたるところで起きる可能性があるわけです。

例えば、枢要な政策において早くも大きな動きが見られる国交省においては、国交省の特殊法人からのリークとされるかたちで日本航空とデルタ航空の資本協力交渉が進んでいることがすっぱ抜かれ、長年の国交省OBの牙城でもあり失政の総括でもある日本航空に政策投資銀行による巨額融資から世界的な航空会社のアライアンス競争の帰結に至るまで、かなり強烈な政策論争が続いていることが分かります。

■第171回国会 財政金融委員会 第23号■

日本国民の大事な資産である日本航空やそこに対する公的助成と性急な出資交渉の背景には、民主党政権に移行する前にやれることは全部やっておこうぜ的な精神が見え隠れします。この構造は、農水省や経産省(とりわけエネルギー関連)など各省庁にも多岐にわたって共有されているようで、中でも民主党から「失政以外見当たらない」とまで評される総務省がどのように民主党政権によって取り扱われるかが注目されます。

新産業として着目すべき通信行政では、ベンダーファイナンスの嵐となり、大手3キャリアの競争はNTTとその他という図式に収斂してしまい、技術革新では国内勢で見るべき企業はない体たらく。NTT再編問題はいまだ議論未消化の状態で、むしろ次世代IPなどの放置された課題残る通信行政。

地上デジタル放送を勢い良く旗振りをしてみたは良いが、末端まで対応テレビや受信機が行き渡らないばかりか強引な多チャンネル化でいたずらに放送業者の経営体力を磨耗させてしまい良質な番組を国民に提供する土台を喪失させてしまった放送行政。正直、「通信と放送の融合」とか凄い勢いで喧伝して省域を拡大してみたは良いけれども、なかなか戦略的な論点を絞り切れず、民間各社の経営状態や世界の技術情勢を読むことができなかった総務省の立て直しは急務と言えるでしょう。

極めて戦略的で、政策課題や技術的側面について充分な知識がない限り、差配することはおろか問題の所在すら掴み切れないこの方面の情勢を、民主党がきちんと知悉し管理を施すことができるのか――このあたりがこれからの見所であり正念場なのではないでしょうか。


●山本一郎(やまもと・いちろう)
イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
著書に『“俺様国家”中国の大経済』、『情報革命バブルの崩壊』(ともに文春新書)、『ネットビジネスの終わり』(PHP研究所)、『リーダーの値打ち』(アスキー新書)などがある。
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