担当者より:2006年に「非モテ」という言葉について、教育からサブカルチャーまで幅広く扱うライターの成松哲さんが書いた一文です。なお、文中で言及されている「非モテMAP」は、2011年現在、ver.003として公開されています。また、成松さんは話題のミニコミ『kids these days!』vol.1を出しており、その特集タイトルは「いまどきの10代に聞いたリアルな「けいおん!」の話。」です。そちらもあわせて是非お読みください。
配信日:2006/08/23
小学館のファッション誌『CanCam』は、最近、蛯原友里ら、同誌専属の人気モデルを起用し、めちゃめちゃモテるためのスタイリング「めちゃモテ」を提案したりと話題を作り、60万部を超える売り上げを誇っているという。また、主婦と生活社の雑誌『LEON』は中年オヤジ、テレビドラマ『電車男』や『ブスの瞳に恋してる』はオタクやブス、と、それぞれモテない属性の代表格だったはずの面々を恋愛の表舞台に引っ張り出した。ことマスメディア(とその受け手)においては、恋愛は最大の関心事であり、金鉱脈でもあるようだ。
しかし、ひとたびネットに目を向けてみると、まったく別の言葉が話題を呼んでいる。それが「非モテ」だ。非モテとは、文字通り、モテない状態のことなのだが「モテ」の純粋な反対語ではない。モテとは基本的に客観的評価だ。「エビちゃんOLみたいな服装をすればモテるよ」と他人に提案するときや、「あのコ、モテるよね」と他人を評価するときに使われる。「オレ、モテるから」なんて真顔で話しても、正気を疑われるのがオチだ。一方、非モテは主観に基づいている。「○○な言動や××な服装は非モテ系」というような使い方はあまりされていない。「オレ、非モテなんですよ」と、モテない自分を表明するのが一般的な用法だ。他人を捕まえて「お前、非モテだよね」などと失礼極まりないことを言ってはいけない。また、モテは男女問わず使用するのに対し、非モテを名乗るのは男性中心というのも大きな違いだろう。
とはいえ、単にモテないだけなら読者諸氏にだって心当たりがあるはず。にも関わらず、非モテが話題になるのは、なぜなのだろう? 非モテに関する議論は、主に2ちゃんねる「モテない男性」板やブログ界隈などで活発に行われている。その状況をまとめたScarecrowBoneLogの「非モテMAP」によると、非モテ系男性は、まず「モテたいのにモテない非モテ」と「モテることに背を向ける非モテ」という2つに分けられるようだ。
現在、特に議論の的になっているのは後者だ。確かにモテたいのにモテない男にかける言葉なんて「頑張ってくれ」くらいしか見つからない。その点、多くの人が恋愛を重大事と考えている中、あえてモテない生き方を選んだ人には「なんで?」と聞きたくなるのが人情だ。しかも、前出「非モテMAP」を眺めてみると、その理由は実にさまざま。過去に恋愛でこっぴどい目に遭ったから、もう懲りたという人もいれば、冒頭で紹介したマスメディアが煽る恋愛至上(市場)主義とも言うべきムーブメントに違和感を感じている人もいる。はたまた、モテること自体に無関心な最終解脱者や、人間嫌いを標榜する人もいる。ここまで各参加者のスタンスが異なるのだから、議論が盛り上がらないわけがない。
以上が、ネットでしきりに議論される「非モテ」の概要だ。これだけなら「ふーん、ネットではそんな話題が盛り上がってるんだ」「確かに面白い生き方だね」というだけのお話だろう。しかし、非モテが提示する価値観は「『非モテ』を知らないあなた」にも、大いに参考にすべき部分があるのだ。
非モテの中には、恋愛に割かれるはずだった労力、費用を趣味や仕事に割り当てることを提案、実践している人も多い。恋愛至上(市場)主義への違和感から、現実女性との恋愛は不要だと明言。二次元美少女キャラクターを脳内夫人とするなど、オタク趣味に生きることを高らかに宣言した『電波男』の著者・本田透氏などが、その代表格だ。
マスメディアの影響も手伝ってか、無意識に恋愛を人生の優先順位の第一位に置いている「『非モテ』を知らないあなた」にだって、女のコとおしゃべりしたり、イチャイチャするよりも、仕事や趣味が楽しくて仕方のない瞬間は必ずあるはずだ。ともすれば、女のコの存在をうざったく感じるときもあるのでは?
また、貧弱ながら、多少は持っている恋愛経験をもとに語らせてもらうなら、恋人や好きな人というデリケートな間柄との関係を円滑に運営するのは、意外と面倒くさく、思いのほか神経や財布の中身を削っていく。関係がうまくいっている時は、その努力が心地よくもあるが、時にストレスになることもまた事実だ。
ならば、完全にモテないことを選択しないまでも、恋愛の優先順位を少し低く設定してみてはいかがだろう。仕事や趣味と同じ、単なるライフサイクルの一局面として扱えば、充実した仕事の時間、趣味の時間を持つことができる。それに、合コンやデートやキャバクラに散財したり、恋に悩んで眠れぬ夜を過ごしたりすることもなくなるかもしれない。肉体的にも、精神的にも、金銭的にも、もっと健全な生活を送りたいなら、今こそ非モテに学ぶべし。
●成松哲(なりまつ・てつ)
ライター。
著者に『凶暴両親』(ソフトバンク新書)、共著に『バンド臨終図巻』(河出書房新社)がある。
ブログ:三十路でアニメ
配信日:2006/08/23
小学館のファッション誌『CanCam』は、最近、蛯原友里ら、同誌専属の人気モデルを起用し、めちゃめちゃモテるためのスタイリング「めちゃモテ」を提案したりと話題を作り、60万部を超える売り上げを誇っているという。また、主婦と生活社の雑誌『LEON』は中年オヤジ、テレビドラマ『電車男』や『ブスの瞳に恋してる』はオタクやブス、と、それぞれモテない属性の代表格だったはずの面々を恋愛の表舞台に引っ張り出した。ことマスメディア(とその受け手)においては、恋愛は最大の関心事であり、金鉱脈でもあるようだ。
しかし、ひとたびネットに目を向けてみると、まったく別の言葉が話題を呼んでいる。それが「非モテ」だ。非モテとは、文字通り、モテない状態のことなのだが「モテ」の純粋な反対語ではない。モテとは基本的に客観的評価だ。「エビちゃんOLみたいな服装をすればモテるよ」と他人に提案するときや、「あのコ、モテるよね」と他人を評価するときに使われる。「オレ、モテるから」なんて真顔で話しても、正気を疑われるのがオチだ。一方、非モテは主観に基づいている。「○○な言動や××な服装は非モテ系」というような使い方はあまりされていない。「オレ、非モテなんですよ」と、モテない自分を表明するのが一般的な用法だ。他人を捕まえて「お前、非モテだよね」などと失礼極まりないことを言ってはいけない。また、モテは男女問わず使用するのに対し、非モテを名乗るのは男性中心というのも大きな違いだろう。
とはいえ、単にモテないだけなら読者諸氏にだって心当たりがあるはず。にも関わらず、非モテが話題になるのは、なぜなのだろう? 非モテに関する議論は、主に2ちゃんねる「モテない男性」板やブログ界隈などで活発に行われている。その状況をまとめたScarecrowBoneLogの「非モテMAP」によると、非モテ系男性は、まず「モテたいのにモテない非モテ」と「モテることに背を向ける非モテ」という2つに分けられるようだ。
現在、特に議論の的になっているのは後者だ。確かにモテたいのにモテない男にかける言葉なんて「頑張ってくれ」くらいしか見つからない。その点、多くの人が恋愛を重大事と考えている中、あえてモテない生き方を選んだ人には「なんで?」と聞きたくなるのが人情だ。しかも、前出「非モテMAP」を眺めてみると、その理由は実にさまざま。過去に恋愛でこっぴどい目に遭ったから、もう懲りたという人もいれば、冒頭で紹介したマスメディアが煽る恋愛至上(市場)主義とも言うべきムーブメントに違和感を感じている人もいる。はたまた、モテること自体に無関心な最終解脱者や、人間嫌いを標榜する人もいる。ここまで各参加者のスタンスが異なるのだから、議論が盛り上がらないわけがない。
以上が、ネットでしきりに議論される「非モテ」の概要だ。これだけなら「ふーん、ネットではそんな話題が盛り上がってるんだ」「確かに面白い生き方だね」というだけのお話だろう。しかし、非モテが提示する価値観は「『非モテ』を知らないあなた」にも、大いに参考にすべき部分があるのだ。
非モテの中には、恋愛に割かれるはずだった労力、費用を趣味や仕事に割り当てることを提案、実践している人も多い。恋愛至上(市場)主義への違和感から、現実女性との恋愛は不要だと明言。二次元美少女キャラクターを脳内夫人とするなど、オタク趣味に生きることを高らかに宣言した『電波男』の著者・本田透氏などが、その代表格だ。
マスメディアの影響も手伝ってか、無意識に恋愛を人生の優先順位の第一位に置いている「『非モテ』を知らないあなた」にだって、女のコとおしゃべりしたり、イチャイチャするよりも、仕事や趣味が楽しくて仕方のない瞬間は必ずあるはずだ。ともすれば、女のコの存在をうざったく感じるときもあるのでは?
また、貧弱ながら、多少は持っている恋愛経験をもとに語らせてもらうなら、恋人や好きな人というデリケートな間柄との関係を円滑に運営するのは、意外と面倒くさく、思いのほか神経や財布の中身を削っていく。関係がうまくいっている時は、その努力が心地よくもあるが、時にストレスになることもまた事実だ。
ならば、完全にモテないことを選択しないまでも、恋愛の優先順位を少し低く設定してみてはいかがだろう。仕事や趣味と同じ、単なるライフサイクルの一局面として扱えば、充実した仕事の時間、趣味の時間を持つことができる。それに、合コンやデートやキャバクラに散財したり、恋に悩んで眠れぬ夜を過ごしたりすることもなくなるかもしれない。肉体的にも、精神的にも、金銭的にも、もっと健全な生活を送りたいなら、今こそ非モテに学ぶべし。
●成松哲(なりまつ・てつ)
ライター。
著者に『凶暴両親』(ソフトバンク新書)、共著に『バンド臨終図巻』(河出書房新社)がある。
ブログ:三十路でアニメ
