担当者より:2007年に文士の松永英明さんがオークションサイトを通して、PCユーザーとケータイユーザーの違いについて論じた原稿です。

配信日:2007/11/07


PCを主に使い、インターネットを活用しているユーザーと、主にケータイを使い、PCをあまり使わないユーザーとでは、同じようなサイトを利用していても、その使い方に大きな違いがある。今回は、オークションサイトにおける「PC族」と「ケータイ族」のその違いを筆者の体験を軸に探ってみたい。

PC系ユーザーが多いオークションサイトとしては、Yahoo!オークション(以下「ヤフオク」)が筆頭に挙げられるだろう。実際にはケータイからも利用できるのだが、ヤフオクの使われ方を見ていると、PCユーザーの傾向が顕著に表われているように思われる。

一方、ケータイオークションとしては、モバオクやスーパーガルオク&ボイオク(以下「ガルオク」)が挙げられる。もっとも、モバオクは当初はケータイのみに対応していたが、現在はPCからも利用可能となっている。そのため、ケータイサイト的な特徴がやや薄まった感はあるが、それでもヤフオクと比べれば、明らかにケータイで利用されているイメージが強い。

ヤフオクとモバオク・ガルオクの違いを一言で言えば、「オトナ」と「若者」の違いということになる。

ヤフオクでは、商品説明から実際のやりとりに至るまで、極めて丁重な言葉遣いが用いられている。「このたびは落札いただきまして誠にありがとうございました。つきましては……」といった調子で、まさに社会人のマナーにのっとった懇切丁寧な表現が使われているのだ。もちろんトラブルが皆無というわけではないが、非常に安心できるオークションサイトと言えるだろう。

一方、モバオクやガルオクでは、もっとくだけたやりとりがなされている。説明文に絵文字は当たり前(というより、絵文字を使わないとぶっきらぼうな印象さえある)。一応ですます体で書かれてはいるが、ヤフオクに比べると極めてフランクな文章だ。

また、ケータイオークションでは、支払方法として着払いや「モバペイ」が、システム側から推奨されている。モバペイとは、モバオクにおいて、落札者が代行業者に代金を支払ったことを確認してから、出品者が落札品を発送し、落札者が受取ったことを通知すると代行業者から出品者に入金されるシステムだ。代金を支払ったのに商品が届かないとか、逆に発送したのに入金がないといったトラブルを防ぐ仕組みである。

にもかかわらず、この「モバペイ」や着払いを拒否し、独特の取引方法を主張している例が非常に多い。さらに、オークションのシステムを理解していないのか、自分の持ち物との「交換」を申し出るユーザーがよく見られることも特徴的である。

PCユーザーが主体のヤフオクは、オトナの丁重なやりとりであるのに対して、ケータイユーザー主体のモバオク・ガルオクは、10~20代を中心とした若者の気軽なやりとりが行なわれている。あくまで筆者自身の経験の範囲ではあるが、ヤフオクでは特にトラブルに巻き込まれたことはない。だが、モバオクでは一方的な「着払い受け取り拒否」などのトラブルが数件あった。

PCを主体に使っているユーザーには信じがたいことかもしれないが、ケータイオークションでは、運営側による使い方の解説ページさえも話し口調で書かれている。オフィシャルなヘルプページに、ケータイ絵文字がふんだんに使われているのを見れば、「異文化」と感じる人も少なくないだろう。

また、オークションサイトから送られてくるメールマガジンも、完全にタメ口である。明らかに10~20代のケータイ族をターゲットとしていることがわかる。もしヤフオクからのメールがこのような口調で書かれていたら、苦情が続出することは想像に難くないし、信頼性さえも失われてしまうだろう。しかし、ケータイオークションでは、堅苦しい口調そのものが受け入れられないのだ。

PCサイトとケータイサイトの違いはほかにもある。PC・インターネットユーザーは、いくつもの商品を比較検討し、少しでもお得なもの、少しでもニーズに近いものを探そうとする。つまり、検索・比較をするのが当たり前といえる。

一方、ケータイユーザーは比較検討をあまりしない。ケータイのインターフェースからして、多くの情報を比較することが難しいということもあって、検索・比較するのではなく、たまたま見つけた「よさそうなもの」を衝動買いする傾向が強い。高額な家電などはほとんど取引されることなく、古着やコスメ、あるいはデコレーションされたケータイ(デコ電)など、特に女性の若いユーザーにとって身近なものを購入する率が高いようである。

こういった違いは、ユーザー層のズレに大きな原因があるだろう。システムの違いだけでなく、ターゲットとするユーザー層の違いで、同じ「オークション」サイトといってもこれほどまでに隔絶が生まれるというのは、非常に興味深い現象である。

某アフィリエイトサービス提供業者の人が、「ケータイサービスに手を出すと、ユーザーマナーがひどいので、対応仕切れるかどうかわからない」と語っていたことがある。マナーがひどいというよりは「コドモっぽい」というべきかもしれないが、ケータイ族の利用マナーが、オトナのPC族に比べてフランクであることは事実と言って差し支えないだろう。

PC主体とケータイ主体のオークションでは、このような大きな違いがある。このことを充分に認識しておかないと、たとえば、PC主体のユーザーがケータイオークションに参加したとき、あまりの「異文化」ぶりにとまどうことにもなりかねないのである。


●松永英明(まつなが・ひであき)
文士。事物起源研究家。
著書に『ウェブログ超入門!』(日本実業出版社)、共著に『できる100ワザブログ』(インプレスジャパン)など、訳書にジェームズ・アレン『幸福に通じるひそやかな道』(ゴマブックス)など多数。
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