担当者より:ライターの矢野利裕さんが2008年にCD・レコード店の経営状況などについて論じた原稿です。
配信日:2008/06/25
ここ数年、中古のCDやレコードを取り扱うお店が大量に閉店していることにお気づきでしょうか。町の小さなレコード屋さんはもちろん、センター街店をはじめ渋谷に三店舗あったレコファンが、2006年6月をもって渋谷BEAM店に統合し業務縮小。あるいは、中古ではありませんが、やはり渋谷を中心に長年愛されてきたクラブ・ミュージック系の老舗レコード専門店CISCOが2007年12月に店舗の閉店。これらの出来事は音楽ファンに大きな驚きを与えました。音楽業界にいったい何が起きているのでしょうか。
こういった事態が起こった要因にはさまざまなことが考えられますが、その大きな要因として、インターネットなど情報技術の発達が挙げられます。中古のCDを買うよりは、レンタルしたCDやダウンロードした曲をパソコンに保存してCD-Rに焼く方が安価だし、CDに焼かなくともi-podなどのデジタル・オーディオ・プレイヤーに曲を入れれば、今度は自由にそれを持ち運ぶことができます。このように情報技術が発達した環境の中、音楽ファンの多くがCDやレコードから遠ざかってしまうのは、ある意味当然と言えるのかもしれません。
さらに、一曲ごとのダウンロードからなる音楽配信サービスの普及は、音楽というものをアルバム単位ではなく、楽曲単位で即物的に聴くような姿勢をますます広めることになりました。このことは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のような、コンセプト・アルバム(アルバム全体が一つの世界観となっているかたちの作品)と呼ばれるものを成立させづらくするとともに、“モノ”としてのCDやレコードにまつわるさまざまな要素が重要視されなくなることにもつながります。
例えば、CD/LPジャケットのアートワークというのは、音楽を楽しむ要素の一つとして親しまれてきましたが、楽曲単位で聴く姿勢が進むと、このような、ジャケットなどに価値を見出す姿勢も失われていくことになります。壁一面に並んだCDやレコードのジャケットの数々はレコード店の大きな魅力の一つなので、このこともレコード店にとって大きな打撃になっていると言えるでしょう。
ところで、CDやレコードに限らず中古屋さんの醍醐味と言えば、とっくに絶版・廃盤になってしまったあの商品に出会えるということです。とくに、何年もかけて探していたものを中古屋で見つけたときには、お宝を発掘したかのような喜びを味わうことでしょう。こういったお宝を管理するために、中古屋さんには専門的な知識に富んだ“目利き”の存在が必須と言えます。買い付けや仕入れ、あるいはお客さんが持ち込んだものの中からお宝を見つけ、それ相応の値段を付けることができる、言わば“目利き”が中古屋さんを支えているのです。
しかし、このこともインターネットの普及や情報技術の発達によって一変しました。あらゆる情報が飛び交っているネット上では、当然、検索にかければすぐにそれなりに専門的な知識を入手することができるし、ネットのオークションを見ることで、その商品の相場をある程度知ることも可能です。また在庫をデータベース管理にして、値段の付け方をマニュアル化するお店も増えてきました。結果、中古屋さんにおいて“目利き”は必ずしも重要では無くなったと言えます。するとどういうことが起きるのか。
お客さんの中には、お店にいる“目利き”をたよりにしている人が少なくありません。豊富な知識をもった“目利き”と交わされる「お客さん、良いの入ったよ」的なコミュニケーションの中で、一見さんは常連客になっていきます。しかし、このような店から“目利き”が減っていくことで、こうしたやりとりも失われていくことになります。こうなるといよいよ利用者が中古レコード店に出向く理由は無くなってきます。お宝はネットで探せば良いし、おすすめ商品はアマゾンが紹介してくれます。
このように、インターネットをはじめとする情報技術の発達を一つの背景として、ここ数年、中古レコード店は数多く閉店しています。ただ、冒頭に挙げたCISCOのように、その一部が店舗販売からに通信販売に姿を変えているということも明記しておく必要があるでしょう。音楽をとりまく状況はこの何年かで激変しており、それによって中古レコード店も変化せざるをえないということです。
今回は音楽を中心に取り上げましたが、こうした変化はもちろん音楽業界だけにとどまるものではありません。とくに本については、店舗閉店を余儀なくされる書店数の増加やブログやメルマガなどのネット配信、あるいは、書店における商品のデータベース管理化などといった点を考えても、ほとんどCD/レコードと同じ道を歩んでおり、それによる影響に関しても同様です。情報技術の発達は、さまざまな場所で経営のあり方を大きく変えつつあります。
●矢野利裕(やの・としひろ)
ライター、DJ、イラストレーター、漫画家、高校教師etc。
ブログ:ヤノ・オン・ウェブ
配信日:2008/06/25
ここ数年、中古のCDやレコードを取り扱うお店が大量に閉店していることにお気づきでしょうか。町の小さなレコード屋さんはもちろん、センター街店をはじめ渋谷に三店舗あったレコファンが、2006年6月をもって渋谷BEAM店に統合し業務縮小。あるいは、中古ではありませんが、やはり渋谷を中心に長年愛されてきたクラブ・ミュージック系の老舗レコード専門店CISCOが2007年12月に店舗の閉店。これらの出来事は音楽ファンに大きな驚きを与えました。音楽業界にいったい何が起きているのでしょうか。
こういった事態が起こった要因にはさまざまなことが考えられますが、その大きな要因として、インターネットなど情報技術の発達が挙げられます。中古のCDを買うよりは、レンタルしたCDやダウンロードした曲をパソコンに保存してCD-Rに焼く方が安価だし、CDに焼かなくともi-podなどのデジタル・オーディオ・プレイヤーに曲を入れれば、今度は自由にそれを持ち運ぶことができます。このように情報技術が発達した環境の中、音楽ファンの多くがCDやレコードから遠ざかってしまうのは、ある意味当然と言えるのかもしれません。
さらに、一曲ごとのダウンロードからなる音楽配信サービスの普及は、音楽というものをアルバム単位ではなく、楽曲単位で即物的に聴くような姿勢をますます広めることになりました。このことは、ビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のような、コンセプト・アルバム(アルバム全体が一つの世界観となっているかたちの作品)と呼ばれるものを成立させづらくするとともに、“モノ”としてのCDやレコードにまつわるさまざまな要素が重要視されなくなることにもつながります。
例えば、CD/LPジャケットのアートワークというのは、音楽を楽しむ要素の一つとして親しまれてきましたが、楽曲単位で聴く姿勢が進むと、このような、ジャケットなどに価値を見出す姿勢も失われていくことになります。壁一面に並んだCDやレコードのジャケットの数々はレコード店の大きな魅力の一つなので、このこともレコード店にとって大きな打撃になっていると言えるでしょう。
ところで、CDやレコードに限らず中古屋さんの醍醐味と言えば、とっくに絶版・廃盤になってしまったあの商品に出会えるということです。とくに、何年もかけて探していたものを中古屋で見つけたときには、お宝を発掘したかのような喜びを味わうことでしょう。こういったお宝を管理するために、中古屋さんには専門的な知識に富んだ“目利き”の存在が必須と言えます。買い付けや仕入れ、あるいはお客さんが持ち込んだものの中からお宝を見つけ、それ相応の値段を付けることができる、言わば“目利き”が中古屋さんを支えているのです。
しかし、このこともインターネットの普及や情報技術の発達によって一変しました。あらゆる情報が飛び交っているネット上では、当然、検索にかければすぐにそれなりに専門的な知識を入手することができるし、ネットのオークションを見ることで、その商品の相場をある程度知ることも可能です。また在庫をデータベース管理にして、値段の付け方をマニュアル化するお店も増えてきました。結果、中古屋さんにおいて“目利き”は必ずしも重要では無くなったと言えます。するとどういうことが起きるのか。
お客さんの中には、お店にいる“目利き”をたよりにしている人が少なくありません。豊富な知識をもった“目利き”と交わされる「お客さん、良いの入ったよ」的なコミュニケーションの中で、一見さんは常連客になっていきます。しかし、このような店から“目利き”が減っていくことで、こうしたやりとりも失われていくことになります。こうなるといよいよ利用者が中古レコード店に出向く理由は無くなってきます。お宝はネットで探せば良いし、おすすめ商品はアマゾンが紹介してくれます。
このように、インターネットをはじめとする情報技術の発達を一つの背景として、ここ数年、中古レコード店は数多く閉店しています。ただ、冒頭に挙げたCISCOのように、その一部が店舗販売からに通信販売に姿を変えているということも明記しておく必要があるでしょう。音楽をとりまく状況はこの何年かで激変しており、それによって中古レコード店も変化せざるをえないということです。
今回は音楽を中心に取り上げましたが、こうした変化はもちろん音楽業界だけにとどまるものではありません。とくに本については、店舗閉店を余儀なくされる書店数の増加やブログやメルマガなどのネット配信、あるいは、書店における商品のデータベース管理化などといった点を考えても、ほとんどCD/レコードと同じ道を歩んでおり、それによる影響に関しても同様です。情報技術の発達は、さまざまな場所で経営のあり方を大きく変えつつあります。
●矢野利裕(やの・としひろ)
ライター、DJ、イラストレーター、漫画家、高校教師etc。
ブログ:ヤノ・オン・ウェブ
