担当者より:文芸からサブカルチャーまで幅広くご活躍なさっている森田真功さんに男性ファンの目から見たジャニーズについて論じていただきました。ご一読ください。
配信日:2010/03/24
2009年の大晦日、ジャニーズのカウントダウン・コンサートを観るべく東京ドームに行き、そしてそこで年を越した。会場でゲットした風船は、まだまだしぼむ様子もなく元気なままでいて、それを見るたび、夢のような一年の締め括りであり幕開けであったな、と思う。テレビの中継で毎年のカウントダウン・コンサートは目にしていたものの、いわゆる現場で、あのオールスター・キャスト的なワン・シーンを体験するのははじめてであって、正直なところ、家を出る前は、ゼロ年代の終わりをジャニーズで迎えるのは正しいのか、躊躇いのほうが大きかったのだが、いや、振り返ってみるなら何もかもがぜんぶ楽しく、参加できてよかった。
さて、まずいっておかなければならないのは、これを書いているのは三十路の独身男性である。しかしジャニーズのアイドルが好きで、今ではコンサートのチケットを取るためファンクラブにいくつも入っている。と、こういうことを他人に話せばたいてい、ええっ、って顔をされるし、時によっては同性愛の人に見られてしまうのだけれども、ぜんぜん違うよ、単純にというか純粋にその、エンターテイメント性の高さに魅了され、知れば知るほど深みにはまっている。これは当然、誰が持っているどんなサブ・カルチャーへの興味にも共通していることだ。
が、やはり、ジャニーズの場合、この国のサブ・カルチャーのなかでもきわめてメジャーでありながら、男性にとっては入り口が狭く、敷居が高い。露出の多さはもちろん人気のパラメーターではあるに違いない一方、テレビ・ドラマやヴァラエティ番組、音楽番組の出演のみで評価を語られることがしばしばなのは、そのためだろう。他のジャンルであれば、いわゆる現場に行ってごらんなさいよ、ほんとうの魅力を知れるから、と開き直れるのに、なかなかそうも言いにくい。じっさい、自分がジャニーズのコンサートによく足を運ぶようになったのは、ここ最近になってだけれども、そりゃあ行きだしたばかりの頃は、あまりの場違い感にくじけそうになったさ。
女性と男性の比率が、9対1とか、そんな生易しいものじゃない。どう見積もっても999対1ぐらいの差がある。そしてその1にしても、たいがいが、彼女さんや娘さん、ご家族の付き添いといった風情である。野郎だけ、というのはまったく見かけられない。グッズ売り場の列に並ぶさいのあの壮絶なほどの孤独ときたら。滅多なことじゃ味わえないんだぞ。そこまで熱心になるなって話だが、いやまあ。しかし、そうした肩身の狭さを踏まえてもなお手にしたい興奮が、ジャニーズのコンサートにはあるのだった。これはファンの贔屓目というより、一度コンサートを観、その魅力に見事はまってしまったクチの体験談として断言したい。
ただし、今や国民的なアイドルにまでなった嵐のコンサートはチケットの取りにくさをべつにすれば、男性だけで来ているファンも少なくはない。どころか、他のグループに比べればではあるが客層の幅は広く、そこからは現在の彼らの勢いが十分に見て取れる。事実、ショーの内容に関しても、おおこれがトップ・クラスか、と納得せざるをえないぐらいの感動にあふれている。とはいえ、人気や活動が安定期に入りつつあるためか、あるいはメンバーが忙しくレコーディングに十分な時間が取れないことを考慮してか、ここ最近、嵐の楽曲には、かつてみたいなダイナミズムをあまり得られず、保守的なイメージのものが多くなっているのを残念に思う。
事務所の先輩であるSMAPやTOKIO、V6など、メンバーの年齢が壮年に達しはじめたグループも決して珍しくはなくなっているが、アイドルと呼ばれる存在であるからにはやはり、いつまでも若々しくフレッシュな息吹のダイレクトに乗ったナンバーを連発して欲しい。たとえば、初期の代表曲にあたる「PIKA☆NCHI」もそうだし、シングルのカップリングでありながらコンサートのエンディングで披露され、最高潮に盛り上がる「五里霧中」みたいに、アップ・テンポでミクスチャー色のひじょうに豊かなタイプの楽曲が、現在の嵐のディスコグラフィからすれば、レアになりつつあるのは寂しい。
そのような、音楽面を含め、方向性のまだ野心的なアプローチを求めていけば、自然と後続のグループに突き当たる。たとえばNEWS、KAT-TUN、関ジャニ∞といった具合にである。なかでもNEWSとKAT-TUNは、それぞれ05年、06年の段階では、シングルの売り上げにおいて嵐を上回っていた点は見逃せない。デビュー直後の人気というのは、要するに、どれだけの宣伝費用をかけるに値したかが大きいのであって、先駆的な支持層の厚さや潜在的なポテンシャルの高さに比例する。その後、両グループともにスキャンダラスな出来事を経、失速していった印象だが、何も持ち前のパフォーマンスが失われてしまったわけではない。熱心なファンを多く持ち、じょじょに活動のスケールをアップしているのが、その証明であろう。
昨年、KAT-TUNは前人未到の東京ドーム延べ10日間公演(内8日間は連続公演)を果たした。個人的には3日分しか観られなかったのだけれども、この内容がとにかくもうすごかった。曲目、日替わりのアトラクションが違ってどうというレベルではなく、映画などでも最上級のスペクタクルが何度目にしても飽きないのと等しく、ショーそのものが驚愕に充ち満ちていたのである。チケットの売り上げがあまり芳しくないという噂もあったけれど、むしろ行かれなかった向きは後悔したほうがいい。いやさすがにそれは言い過ぎであったとしても、だ。壮大に組まれたステージ・セットのなか、グラマラスでハード・ロック色の強いナンバーを矢継ぎ早に繰り出し、だだっ広い会場中に絶頂をもたらしていくさまには、記録として残る以上の価値があった。
メンバーの出演作がヒットしない云々、悪しく言われることも少なくはないが、是非とも現場で体験してみて欲しいのがKAT-TUNである。だいたい、東京ドーム・クラスでヒューマン・ビートボックスのソロ・コーナーをやりきるメンバーのいるアイドル、という時点で希有ではないか。他方、テレビ番組における器量の良さなどで、一般的な認知度を高めてきているのが関ジャニ∞であった。とくに横山裕、村上信吾の二名に、芸能人としての達者なスキルの備わっていることは、頻繁に確認されるし、機会があったらコンサートの模様を収めたDVD『47』や『TOUR 2∞9 PUZZLE』に付属された特典映像を観られたい。横山と村上を中核に、本物のドッキリ番組さながらの企画と演出をこなし、げらげら笑い転げられる瞬間をいくつも作り上げている。
かくしてジャニーズのいろものであるような役割を引き受けながら、他のグループにはない魅力を開花させている関ジャニ∞ではあるけれど、じつは音楽的な素養も侮れない。コンサートでは、演歌からファンクからロックまでレパートリーの広いセット・リストをそつなく歌い踊るばかりか、メンバー自身が楽器を手に生演奏でジャム・セッションを繰り広げたり、意外と本格的な面を見せてくれる。少なくとも、ふだんジャニーズ以外ではハードコアやヘヴィ・メタルの類を好んで聴く自分みたいな人間にも、満足がいくだけのアピールがそこには備わっている。
結局のところ、関ジャニ∞の、硬軟の両面における卓越したパフォーマンスは、先ほどいった横山と村上、そして渋谷すばるを加えた年長者三名の、まさしく叩き上げであるかのようなキャリアに集約されるのではないか、と思う。いうまでもなく、ジャニーズ事務所は芸能界の大企業であって、そこの支部にしかすぎない関西ジャニーズJr.に入り、東京の本社に比べて必ずしも待遇が良くはないなか、酸いも甘いも噛み分けつつ、ふんばりにふんばり、ようやく成果を実らせつつあるというのは、それをある種のサラリーマンの物語に読み替えてみたとき、たいへんドラマティックなのである。一時期冗談半分で、メンバー全員が中卒、というふうに自己紹介する機会が多かったのも、つまりはコンプレックスの裏返しだろう。しかしそうした、自分たちにはもうこれしかないんだ、という意気込みが、あるいは今でこその際立ったポジションやファンへのサービス精神に繋がっていたとしても、不思議ではない。同様のことは、不祥事によりグループを外れた8人目のメンバーで、現在はソロ活動を行っている内博貴にもいえる。
99年にデビューし、まさしくゼロ年代を突っ走ったのが嵐だとすれば、それ以降の、すなわち2010年代のジャニーズを考えるさい、おそらく必然的に浮上してくるのが、NEWS、KAT-TUN、関ジャニ∞の3グループであるが、彼らよりもさらに若い世代としてHey! Say! JUMPがいる。ただHey! Say! JUMPに関しては、メンバーが10人と数多く、デビュー後も、関西ジャニーズJr.出身の中山優馬などを加えたNYCboysへと人が割り振られがちなこともあって、グループ全体がどうというほどの基礎が出来上がっていない印象を、仕方がなく受けてしまう。反対に、デビュー前ではあるものの、グループ単位でファンに待望されているのが、Kis-My-Ft2だろう。
光GENJI以来となるローラースケートの着用が、Kis-My-Ft2のトレードマークとなっているけれども、そうした外連のみにとどまらないポテンシャルを有しているのは、昨年に横浜アリーナで行われた彼らの単独公演を観、確認することができた。Kis-My-Ft2の名前を出したのなら、A.B.C.-ZやFIVE、Question?も、と続けていくとキリがなくなるのでやめるけれど、そのコンサートを体験してよりこちら興味を抱いているのは、とくにFIVEである。バンド形式のユニットであって、他のグループの後ろで演奏をつとめ、東京ドームなどの大舞台に上がる機会が多いため、技術的には申し分ない。現在進行形のロックを意識したサウンドもなかなかに魅力的なのだった。が、しかしライヴで聴くかぎり、自作の楽曲にどこかこう、突き抜けるほどのオリジナリティがないのも正直なところで、はたしてこのままバック・バンドの扱いで終わるのか、はらはら、気になってしまう。
ここまできて一つはっきりしているのは、グループの背景に何かしらのドラマを読み取ることもまた、ファンとして銘々のグループに感情移入する大きな要素だという点であった。03年に華々しくデビューしたNEWSは、メンバーの脱退にともなう活動の休止など、さまざまなハプニングを乗り越えてきたことが現在のカラーに通じているのであって、一喜一憂しながらファンが付いてくる理由になりえているのかもしれない。関ジャニ∞についてはすでに述べたとおりであるし、長い下積み期間や赤西仁の復帰劇を経たKAT-TUNにもそういうふしがある。感情移入が高じれば、メンバー各人の声に特徴を見つけられるようになり、楽曲の聴こえ方も一味違ってくる。細かいニュアンスの発見に喜びが生まれもする。もちろん、それは男性が女性のアイドルを追いかけているうち、深くはまってしまうのと、そう大差ない。
これを書いている自分自身は、アイドルを好きになるのに必ずしも色欲のフィルターを条件としない、と考えるタイプである。そのような立場から求めているのは、エンターテイメント性の高さにほかならない。ジャニーズの、ことに現場でしか体験できないパフォーマンスは、その本質をよく教えてくれる。そりゃあステージに近ければ近いほうが良いに決まっているのだったが、東京ドームや横浜アリーナの遠い二階席ですら絶対に損したとは思わせないぐらい、破格のパフォーマンスには毎回毎回目を剥かされるのであって、まず間違いなく、そこには今までになかった新鮮な光景がひらけている。
話を最初に戻すけれども、男性なのにジャニーズが好きと口に出せば、他人からはよく怪訝な顔をされる。しかしそれはこちらが特別だからなのではない。そうさせるジャニーズが、つまりは特別なのだと言いたい。
●森田真功(もりた・まさのり)
ライター。
文学、マンガ、ジャニーズを好み、その批評を精力的に発表し続けている。
共著に『ヤンキー文化論序説』(河出書房新社)。
ブログ:Lエルトセヴン7第2ステージ
配信日:2010/03/24
2009年の大晦日、ジャニーズのカウントダウン・コンサートを観るべく東京ドームに行き、そしてそこで年を越した。会場でゲットした風船は、まだまだしぼむ様子もなく元気なままでいて、それを見るたび、夢のような一年の締め括りであり幕開けであったな、と思う。テレビの中継で毎年のカウントダウン・コンサートは目にしていたものの、いわゆる現場で、あのオールスター・キャスト的なワン・シーンを体験するのははじめてであって、正直なところ、家を出る前は、ゼロ年代の終わりをジャニーズで迎えるのは正しいのか、躊躇いのほうが大きかったのだが、いや、振り返ってみるなら何もかもがぜんぶ楽しく、参加できてよかった。
さて、まずいっておかなければならないのは、これを書いているのは三十路の独身男性である。しかしジャニーズのアイドルが好きで、今ではコンサートのチケットを取るためファンクラブにいくつも入っている。と、こういうことを他人に話せばたいてい、ええっ、って顔をされるし、時によっては同性愛の人に見られてしまうのだけれども、ぜんぜん違うよ、単純にというか純粋にその、エンターテイメント性の高さに魅了され、知れば知るほど深みにはまっている。これは当然、誰が持っているどんなサブ・カルチャーへの興味にも共通していることだ。
が、やはり、ジャニーズの場合、この国のサブ・カルチャーのなかでもきわめてメジャーでありながら、男性にとっては入り口が狭く、敷居が高い。露出の多さはもちろん人気のパラメーターではあるに違いない一方、テレビ・ドラマやヴァラエティ番組、音楽番組の出演のみで評価を語られることがしばしばなのは、そのためだろう。他のジャンルであれば、いわゆる現場に行ってごらんなさいよ、ほんとうの魅力を知れるから、と開き直れるのに、なかなかそうも言いにくい。じっさい、自分がジャニーズのコンサートによく足を運ぶようになったのは、ここ最近になってだけれども、そりゃあ行きだしたばかりの頃は、あまりの場違い感にくじけそうになったさ。
女性と男性の比率が、9対1とか、そんな生易しいものじゃない。どう見積もっても999対1ぐらいの差がある。そしてその1にしても、たいがいが、彼女さんや娘さん、ご家族の付き添いといった風情である。野郎だけ、というのはまったく見かけられない。グッズ売り場の列に並ぶさいのあの壮絶なほどの孤独ときたら。滅多なことじゃ味わえないんだぞ。そこまで熱心になるなって話だが、いやまあ。しかし、そうした肩身の狭さを踏まえてもなお手にしたい興奮が、ジャニーズのコンサートにはあるのだった。これはファンの贔屓目というより、一度コンサートを観、その魅力に見事はまってしまったクチの体験談として断言したい。
ただし、今や国民的なアイドルにまでなった嵐のコンサートはチケットの取りにくさをべつにすれば、男性だけで来ているファンも少なくはない。どころか、他のグループに比べればではあるが客層の幅は広く、そこからは現在の彼らの勢いが十分に見て取れる。事実、ショーの内容に関しても、おおこれがトップ・クラスか、と納得せざるをえないぐらいの感動にあふれている。とはいえ、人気や活動が安定期に入りつつあるためか、あるいはメンバーが忙しくレコーディングに十分な時間が取れないことを考慮してか、ここ最近、嵐の楽曲には、かつてみたいなダイナミズムをあまり得られず、保守的なイメージのものが多くなっているのを残念に思う。
事務所の先輩であるSMAPやTOKIO、V6など、メンバーの年齢が壮年に達しはじめたグループも決して珍しくはなくなっているが、アイドルと呼ばれる存在であるからにはやはり、いつまでも若々しくフレッシュな息吹のダイレクトに乗ったナンバーを連発して欲しい。たとえば、初期の代表曲にあたる「PIKA☆NCHI」もそうだし、シングルのカップリングでありながらコンサートのエンディングで披露され、最高潮に盛り上がる「五里霧中」みたいに、アップ・テンポでミクスチャー色のひじょうに豊かなタイプの楽曲が、現在の嵐のディスコグラフィからすれば、レアになりつつあるのは寂しい。
そのような、音楽面を含め、方向性のまだ野心的なアプローチを求めていけば、自然と後続のグループに突き当たる。たとえばNEWS、KAT-TUN、関ジャニ∞といった具合にである。なかでもNEWSとKAT-TUNは、それぞれ05年、06年の段階では、シングルの売り上げにおいて嵐を上回っていた点は見逃せない。デビュー直後の人気というのは、要するに、どれだけの宣伝費用をかけるに値したかが大きいのであって、先駆的な支持層の厚さや潜在的なポテンシャルの高さに比例する。その後、両グループともにスキャンダラスな出来事を経、失速していった印象だが、何も持ち前のパフォーマンスが失われてしまったわけではない。熱心なファンを多く持ち、じょじょに活動のスケールをアップしているのが、その証明であろう。
昨年、KAT-TUNは前人未到の東京ドーム延べ10日間公演(内8日間は連続公演)を果たした。個人的には3日分しか観られなかったのだけれども、この内容がとにかくもうすごかった。曲目、日替わりのアトラクションが違ってどうというレベルではなく、映画などでも最上級のスペクタクルが何度目にしても飽きないのと等しく、ショーそのものが驚愕に充ち満ちていたのである。チケットの売り上げがあまり芳しくないという噂もあったけれど、むしろ行かれなかった向きは後悔したほうがいい。いやさすがにそれは言い過ぎであったとしても、だ。壮大に組まれたステージ・セットのなか、グラマラスでハード・ロック色の強いナンバーを矢継ぎ早に繰り出し、だだっ広い会場中に絶頂をもたらしていくさまには、記録として残る以上の価値があった。
メンバーの出演作がヒットしない云々、悪しく言われることも少なくはないが、是非とも現場で体験してみて欲しいのがKAT-TUNである。だいたい、東京ドーム・クラスでヒューマン・ビートボックスのソロ・コーナーをやりきるメンバーのいるアイドル、という時点で希有ではないか。他方、テレビ番組における器量の良さなどで、一般的な認知度を高めてきているのが関ジャニ∞であった。とくに横山裕、村上信吾の二名に、芸能人としての達者なスキルの備わっていることは、頻繁に確認されるし、機会があったらコンサートの模様を収めたDVD『47』や『TOUR 2∞9 PUZZLE』に付属された特典映像を観られたい。横山と村上を中核に、本物のドッキリ番組さながらの企画と演出をこなし、げらげら笑い転げられる瞬間をいくつも作り上げている。
かくしてジャニーズのいろものであるような役割を引き受けながら、他のグループにはない魅力を開花させている関ジャニ∞ではあるけれど、じつは音楽的な素養も侮れない。コンサートでは、演歌からファンクからロックまでレパートリーの広いセット・リストをそつなく歌い踊るばかりか、メンバー自身が楽器を手に生演奏でジャム・セッションを繰り広げたり、意外と本格的な面を見せてくれる。少なくとも、ふだんジャニーズ以外ではハードコアやヘヴィ・メタルの類を好んで聴く自分みたいな人間にも、満足がいくだけのアピールがそこには備わっている。
結局のところ、関ジャニ∞の、硬軟の両面における卓越したパフォーマンスは、先ほどいった横山と村上、そして渋谷すばるを加えた年長者三名の、まさしく叩き上げであるかのようなキャリアに集約されるのではないか、と思う。いうまでもなく、ジャニーズ事務所は芸能界の大企業であって、そこの支部にしかすぎない関西ジャニーズJr.に入り、東京の本社に比べて必ずしも待遇が良くはないなか、酸いも甘いも噛み分けつつ、ふんばりにふんばり、ようやく成果を実らせつつあるというのは、それをある種のサラリーマンの物語に読み替えてみたとき、たいへんドラマティックなのである。一時期冗談半分で、メンバー全員が中卒、というふうに自己紹介する機会が多かったのも、つまりはコンプレックスの裏返しだろう。しかしそうした、自分たちにはもうこれしかないんだ、という意気込みが、あるいは今でこその際立ったポジションやファンへのサービス精神に繋がっていたとしても、不思議ではない。同様のことは、不祥事によりグループを外れた8人目のメンバーで、現在はソロ活動を行っている内博貴にもいえる。
99年にデビューし、まさしくゼロ年代を突っ走ったのが嵐だとすれば、それ以降の、すなわち2010年代のジャニーズを考えるさい、おそらく必然的に浮上してくるのが、NEWS、KAT-TUN、関ジャニ∞の3グループであるが、彼らよりもさらに若い世代としてHey! Say! JUMPがいる。ただHey! Say! JUMPに関しては、メンバーが10人と数多く、デビュー後も、関西ジャニーズJr.出身の中山優馬などを加えたNYCboysへと人が割り振られがちなこともあって、グループ全体がどうというほどの基礎が出来上がっていない印象を、仕方がなく受けてしまう。反対に、デビュー前ではあるものの、グループ単位でファンに待望されているのが、Kis-My-Ft2だろう。
光GENJI以来となるローラースケートの着用が、Kis-My-Ft2のトレードマークとなっているけれども、そうした外連のみにとどまらないポテンシャルを有しているのは、昨年に横浜アリーナで行われた彼らの単独公演を観、確認することができた。Kis-My-Ft2の名前を出したのなら、A.B.C.-ZやFIVE、Question?も、と続けていくとキリがなくなるのでやめるけれど、そのコンサートを体験してよりこちら興味を抱いているのは、とくにFIVEである。バンド形式のユニットであって、他のグループの後ろで演奏をつとめ、東京ドームなどの大舞台に上がる機会が多いため、技術的には申し分ない。現在進行形のロックを意識したサウンドもなかなかに魅力的なのだった。が、しかしライヴで聴くかぎり、自作の楽曲にどこかこう、突き抜けるほどのオリジナリティがないのも正直なところで、はたしてこのままバック・バンドの扱いで終わるのか、はらはら、気になってしまう。
ここまできて一つはっきりしているのは、グループの背景に何かしらのドラマを読み取ることもまた、ファンとして銘々のグループに感情移入する大きな要素だという点であった。03年に華々しくデビューしたNEWSは、メンバーの脱退にともなう活動の休止など、さまざまなハプニングを乗り越えてきたことが現在のカラーに通じているのであって、一喜一憂しながらファンが付いてくる理由になりえているのかもしれない。関ジャニ∞についてはすでに述べたとおりであるし、長い下積み期間や赤西仁の復帰劇を経たKAT-TUNにもそういうふしがある。感情移入が高じれば、メンバー各人の声に特徴を見つけられるようになり、楽曲の聴こえ方も一味違ってくる。細かいニュアンスの発見に喜びが生まれもする。もちろん、それは男性が女性のアイドルを追いかけているうち、深くはまってしまうのと、そう大差ない。
これを書いている自分自身は、アイドルを好きになるのに必ずしも色欲のフィルターを条件としない、と考えるタイプである。そのような立場から求めているのは、エンターテイメント性の高さにほかならない。ジャニーズの、ことに現場でしか体験できないパフォーマンスは、その本質をよく教えてくれる。そりゃあステージに近ければ近いほうが良いに決まっているのだったが、東京ドームや横浜アリーナの遠い二階席ですら絶対に損したとは思わせないぐらい、破格のパフォーマンスには毎回毎回目を剥かされるのであって、まず間違いなく、そこには今までになかった新鮮な光景がひらけている。
話を最初に戻すけれども、男性なのにジャニーズが好きと口に出せば、他人からはよく怪訝な顔をされる。しかしそれはこちらが特別だからなのではない。そうさせるジャニーズが、つまりは特別なのだと言いたい。
●森田真功(もりた・まさのり)
ライター。
文学、マンガ、ジャニーズを好み、その批評を精力的に発表し続けている。
共著に『ヤンキー文化論序説』(河出書房新社)。
ブログ:Lエルトセヴン7第2ステージ
